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盟主高鳥慶介が美少女・美女の秘書軍団を持っているのは、公然の事実である。
秘書にして巫女、略して、彼女たちをヒミコと呼ぶ連中もいる。”若き神”たる高鳥に奉仕するのは彼女たちの神聖な職務であった。そこには、高鳥との”夜の奉仕”も含まれているのは、教団の中では公然の秘密であった。
夫もちであろうと独身であろうと、高鳥の”精=聖”を受けるのは、女性たる巫女の最高の喜びであり、女として生まれたものの目標、その誉れであると、彼女たちは、まじめに考えていたのだ。
彼の精を受け、優れた神の子孫を宿し、残すのは、女という生き物の最高の人生ではないか。高鳥慶介の前に、身体を開くこと、それが、ヒミコたちの目的であったが、日常は、彼のために清楚に誠実に働き、夜の閨で彼に奉仕する時を得る。
高鳥の精を得るのは、彼女たちにとり、獲得すべき賞杯であり、ヒミコたちは、みながライバルであったのだ。
それを、別格で差配するのが、久保陽子という美少女だった。元々はGENKEN創設メンバーとして、東丈にGENKENを始める場を提供した青林学園高校の同級生である。その彼女が、いろいろな経緯をへて、同僚であったはずの井沢郁江から離れて、今度は高鳥慶介のRMA結成に参画したのだった。
得体の知れないところはあったが、彼女の”救世主”の秘書としての手腕は、卓抜したものがあった。彼女をなくしてGENKENが成り立たなかったように、確かに、久保陽子がいなければ、RMAもまた成立しなかっただろう。
高鳥と久保陽子の関係は、RMAの中でも別格であったが、しかし、高鳥がほかのヒミコと一晩をともにしても、彼女はそれをして嫉妬に走ることは無かった。その意味では、まことに”人間離れ”していたのであった。
おおいなる深淵・・なにか、彼女の中の大事なものが、ごっそり抜け落ちてしまった。歩く”うつろ”。
しかし、その彼女が淡々と高鳥をこの世の”真の救世主”として売り出そうとしているのは、間違いない。
高鳥は、自分の意思でそれをしていると信じているが、それでも、久保陽子の手のひらの上で踊らされているのではないかという疑念を拭い去ることが出来ないのだった。こうして、女を抱いている瞬間にも久保陽子がどこからかそれを観察しているのではないかという、うそ寒い感覚が、彼を捉えて話さない。思わず、背後を振り返りたくなる衝動。
「あいかわらず、励んでいるね」
しかし、その冷たい声は、男のものだった。
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