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”ぎく!”
あまりに不意だったので、高鳥も体が、動いた。
「ああん・・」腕の下の、裸の女が、しかしそれを攻めと感じたのか、歓喜の声を上げる。
「だ、誰だ」
「僕です」
「江田四郎」高鳥はうめくように言った。
「?誰か、いるの、主宰さま?」
「うむ・・」
「ああ、そのまま、続けていいですよ。女の子には、僕がいるのはわかりませんから」
闇が固まったような、学生服のカマキリのような背の高い少年が言った。めがねの奥に冷たい瞳。そして、相手を嘲笑しているとしか見えない皮肉に小さくゆがんだ唇。まさに、街角で出くわしたら、問答無用でぶん殴りたくなる面相。それが、この江田四郎という少年の今の姿だった。
しかし、もしあなたがプロレスラーといった腕に覚えの在る猛者であっても、それはお勧めしない。
外見と違い、彼は間違いなく、かなりのいわゆるの”超能力者”だからだ。ことによったら、高鳥以上の。
誰も入れないはずのこの高鳥のベッドルームにどこからともなく現れたのは、その証拠である。
もともと、この江田四郎、失踪したあの東丈の数少ない親友だった男だ。だが、東丈が”宇宙の真実”に目覚め、GENKENを立ち上げる前後から疎遠になり、ついに対立関係にまでなってしまったのであった。
”東丈こそは、救世主などではなく、超能力の魔王である!”
そのうわさを流したのは、まさにこの江田四郎だった。しかし、東丈の講演会の途中でそそくさと退場して以来、その活動は水面下に隠れている・・
一時期、東丈のあの失踪の影に江田四郎の暗躍があるのではないかと疑われた時期もあったようだが、いまだに自由であるところを見ると、うわさ以上のことではなかったのだろう。
「それは、ありがたい」女の子の中で萎えない自分を確認して、高鳥はふてぶてしく言った。
無論、今の高鳥の腕の中の裸の女の子は、久保陽子ではない。
「で、何のようだね、江田四郎」
「”表敬訪問”ってだめですかね」
この女の子も日本屈指の大企業の重役の娘だ。”出世のために、娘を差し出す”ことを恥じない、オヤジの娘だ。そんなオヤジの娘だとしても、高鳥は、当然のように抱く。
「RMAに入りたいというのなら、受付にいってくれないかな」
きちんと会話できる自分を褒めたい気分になった高鳥である。
「別に入る必要はない」
「東丈を殺したから?」
「・・そうだ・・といいたいのだけどね、どうも違うようだ。あのカッチン玉は勝手にいなくなったのさ、勝手にね。ただ、そのおかげかどうか、同時に、幻魔の親玉も行方不明になったのも事実だが」
「ほ・・う?」
「どうも、それも本当のようなので、こうして、姿を見せたんだ」
「はん・・思い出したけど、なんだか、うわさを聞いたが地回りのヤクザと喧嘩をして、大怪我をしたんじゃなかったか」
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