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「ご心配ありがとう。あ、一言言っておくと、地回りじゃないんだけどね」
「む・・」
「山野組の、東明会。本当なら、警察アタリから、ヤクザを壊滅させたことで感謝状がほしいくらいなんだけど」
「よせやい、ただの縄張り争いだろ」
「そうとも言う」
「じゃあ、いいじゃないか、こんどは、おまえが山野と組めば」
「その程度では、意味がない。せっかく、目の上のたんこぶがなくなったんだから」
「で、僕のところに?だったら、こんなところに現れないで、普通に受付に回ってくれないかな。もちろん、下の受付の開いている時間に。確か、朝の9時からのはずだけど」
「ま、別に、オタクのところに来たつもりはないから」
「は・・?」
「いるんだろ、陽子君」
「・・・ええ、江田さん」
女学生のセーラー服のまじめそうな美少女が、どこからともなく現れた。黒いセーラー服は、やはり江田のそれと同じで、闇の固まったようであった。
「覗き見かい」
「いや・・多分、妊娠の可能性をを確認するためだよ。それだけだ」江田四郎が言った。
「妊娠の可能性って」
「女性の場合、妊娠の可能性は月に一度。でも、男性の場合は、相手さえいれば、その何十倍になりえる。僕たちのような超能力者は、どの種族であれ、ミュータントとして、生まれにくいのは、知れている。それが”太陽の戦士”であれ”幻魔”であれ・・ね」
「僕は、種馬かよ」
「・・・」二人の沈黙は、何よりも雄弁な肯定であった。
「どうして、そんなことに・・いや、そもそも的に君たちは、グルだったのか」
GENKEN時代、その噂を高鳥も聞いていた。
GENKENの創設メンバーだった久保陽子が、GENKENに顔を出さなかった時期があったのは、江田四郎の陣営に拉致され、高校生に過ぎない彼らには言葉に出来ない、無体なことをされたからだという。
拉致された陽子を救い出したのは東丈だったというが、しかし、それをしても江田四郎たちを懲らしめることはしなかった。東丈は、なぜか久保陽子だけを奪還して、良しとしたらしい。
噂どおりの超絶的超能力を駆使すれば、江田四郎を殺すことさえ出来たはずなのに、彼は、それをしなかった。
”それは、東丈には、そんな噂ほどの超能力がなかったからだ。超能力で、NYまで飛んだなんて、人間の身でありえる話ではない”
高鳥慶介は、そう判断した。超能力なんて、所詮は”手でやれば簡単なことを、手を使わないでやる”手品の延長でしかないからだ。少なくとも、高鳥の出来るのは、その程度のことだったからである。
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