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「別の生き方をしてもいいのじゃないか、と」
「ええ、いまさら、正義の味方の生き方なんか、逆さに振っても出来っこないことはわかりますけどね。それは、それで」
「で、この高鳥氏を、あのカッチン玉の東丈の変わりに、”真の救世主”として、働かせることにしたのだね」
「あたしには、それくらいしかできませんから」
「・・・そうか、君は、君だったのか・・君に会わなければ、東丈は救世主にはなろうとしなかった。君のご両親は、あのS学会のお世話役として活躍している現役バリバリの人で。もしかして君も、有名な”I先生”に会ったことがあるんじゃないか。だから、君はその”I先生”とS学会をモデルに、GENKENを立ち上げた」
「わたしには、それしか出来なかったんですもの、わたしが、東さんに出来るのは、そこまで」
「でも、それも、青林学園の中でのことで?」
「それを越えて・・万が一にも、S学会と対立するようなことがあれば、わたしは重大な裏切り者になってしまいます」
「ご両親にも、そこを釘を刺されたんだね」
「ええ」
「君の、そのキングメーカの野心が、この世界を作ったのかもしれないね」
「でも、いいんです、今は、どうでも。ただ、今は、そうでもしないと、この胸のうつろさを、どうすることもできなくて」
「男と女のことをしても、埋まらない」江田四郎は、ずけりと言った。
「ええ、気分を紛らすことは出来るけど、でも、一時のことで」
「でも、所詮、僕たちに出来ることは、それによく似たニセモノだよ。ニセモノでは、世界は幸せに出来ない」
「ニセモノでも、確かに出来ることはあるわ」
「井沢郁江君を支えることは考えないのかい。なんだか、苦戦しているようだけど」
「どうでもいいんです。東先生のいないGENKENは、もうGENKENでもなんでもないのだから」
「なるほど。それは、正しい認識だろうね、たとい井沢郁江が引き継いだところで、それは、まったく別の組織ということか。だから、好きにせよと」
「ええ、お互いにお互いの道を行きましょうということで・・まあ、もちろん、ぶつかることがあれば、そのときは、戦いますけど」
「で、君は、この高鳥氏を使って、何をしようとしているんだ?超能力者を増やして・・幻魔に対抗する?幻魔が幻魔と戦うというの」
「幻魔にして、幻魔にあらざるもの。とても中途半端な存在なら、それでもいいのではないかしら」
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