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悶える病みヤモリ
碧がプロデュースした都内散策は、なんとも少女めいていて影山は面食らっていた。
三田村氏と行きたかったのだろうな。
アクアリウムを泳ぐ魚の群れを、碧はどうでもよさそうに眺めていた。
さっきから涼白からは混乱と戸惑いの感情しかない。
おのれ風間静也。涼白を誘惑するなど許さん。
「若干の修正をしてやる。涼白が妊娠したら父親は静也だ。さっき確認した。グランドフォックスホテルの最上階スイートは空いてるそうよ」
慌てて電話で確認した。思わず握りつぶしてしまった。携帯を。
涼白。涼白。お兄ちゃんがいると言うのに、もうそこまで大人に。お兄ちゃんを抜き去るように。
「許せるものか!涼白の!白く火照った肌を、ベッドに押し倒された涼白は夢に心地で!赤く染まったお臍から下をガードするす、すすす!涼白のパ!パ!パンティーに指をかけるなど許せん!お嬢様!しばしのお別れです!憎い犬を誅して参る!」
脳内妹のとろんとした裸体を想起して、大量の鼻血を垂れ流して、影山さんははっきりと言い放った。
「落ち着け。うちの家族はどっちかって言うと健常ではなくどこまでも病んでいる訳だが。ママは中でも傑物だが、お前も匹敵しつつあるぞ。鼻血を拭け病みヤモリ。何が駄目なんだ?涼白は莉里すらメロメロになる可愛い白メイドだ。涼白が妊娠出産となれば一家が全力でバックアップするだろうよ。お前がさっさと涼白を頂かなかったから。据え膳食わず遅れ馳せた犬に食われたなら諦めろ。涼白のすべすべおっぱい舐めまわされても文句は言わさんぞ」
「お?!ぶ!ぶふう?!」
すべすべおっぱいは許容の範囲外だった。
大量出血していた。
ガラスで遮蔽された向こうでは、サメが悠然と泳いでいる。
「あー。シスコンが悶絶してると私も引っ張られるのよね。三田村さんと行きたかった。せっかく最高級の勝負パンツ履いてきたのにさ」
おっさん執事に懸想する病み小児は、病みヤモリを黙殺してガラスの中を海を見つめていた。
「あ!あああ!涼白の思念が途絶えた!おのれええええええ!事後の気だるい空気か!後朝の気だるい午後かあああああああああ!!」
「10キロ離れたからだろ馬鹿」
呆れた碧は言った。
「涼白おおおおお!アリオト!今どこにいるんだ?!お兄ちゃんはここだぞおおおおおおおおおおおおおお!」
「うるさいな。なら近くに行くか。今頃電車で仲良く移動中だ。確か莉里は海浜公園のチラシを持ってた。これだ。行ってみるか?今特設会場で出土品の展示してるってさ」
言い終わる前にもう影山はいなくなっていた。
碧は溜息を吐いた。
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