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若き魔王は耽美な夢を見る
勘解由小路流紫降は、屋敷の中に行き交う人間が少ないので、おや?と思ったのだった。
そう言えば、色々な場所でのべつまくなしにイチャイチャしている両親の姿がないのだった。
寝てるのかな?ちょっと父さんに相談しようと思っていたのに。
父さんモテるから、きっと可愛い子をどうすればいいのか教えてくれるだろうな。
自分が父親以上にモテる美貌持ちであることを自覚しないままに、勘解由小路家長男は、気になる女の子に電話をかけたのだった。
渋谷駅前で待ち合わせた島原真帆の姿を認め、流紫降は嬉しそうに駆け寄った、
「ごめんね真帆ちゃん。待たせちゃって」
「別にいいよ。こんにちは流紫降君」
ああ。真帆ちゃん可愛いな。でも、
真帆は荷物を背負っていた。画材にスケッチブック、それとイーゼルを背負っていた。
「荷物を持つよ。狐池さん、よろしく」
恭しく荷物を持ったのは狐面の黒子装束だった。
綺麗な青いワンピースを着た眼鏡少女と、白いワンピースの絶世の女装少年のデートはこうして始まったのだった。
真帆に連れられて流紫降がきたのは池袋だった。
一説によると池袋は腐海に沈んだ街だと言われていた。
真帆ちゃん、君は一体?
「ここは面白い街なんだって。BLって知ってる?ここは実を結ぶことのない愛が溢れてるんだって。池袋東口のTSUTAYAは聖地なんだって。行ってみたいってママに言ったら怒られちゃった。パパも眉間にしわ寄せて悩んでた。パパには理解出来ない世界があるんだって。ほら、色々なところに男の人がいる。彼等にもきっと菊の花的な物語がある。ああ私はそっちの方向にはあまり関心はないんだけど。ちょっと巡ってみたいの。創作意欲が刺激されるわ。危うい耽美な世界を側から見る楽しみはきっとあるもの」
真帆はブラックホールのような入り口に向かっていった。
真帆ちゃん。本当に君は一体?
あれ?あれは。まあいいか。
流紫降の視界の端に、剣呑なカップルが店に入って行くのが見えた。
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