燃え上がる初々しいカップルとしょうもない神

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燃え上がる初々しいカップルとしょうもない神

まあそれはそれとして、涼白さんは甘いものを求め続けていた。まさに甘味行脚と言っていい塩梅で、10メートルごとに吸い寄せられるように涎を垂らしていた。 これじゃ涼白クリ子だな。いや駄目だまた泣いちゃう。涼白さんを泣かせてしまったら、終わってしまう。男として。 涼白さんはクレープを食べながら、真っ白いミルクレープを貪っていた。 「凄い勢いで食べてるわね。甘子か甘実じゃ駄目?涼白さん静也を前にしてかえって混乱して自動的に甘い物に食いついてない?」 「また泣いちゃうのよさ。きちんと涼白さんウォッチングするのよさ。マシな名前つけないとあんたは払底になるのよさ」 何その罰ゲーム。幸せそうな涼白さんの姿があった。 海風が二人の間を吹き抜けていた。 海浜公園に足を伸ばしていた。 電車のつり革に掴まる涼白さんに違和感はなく、むしろ周囲の注目を集めていた。 駅のエスカレーターを登る際、静也は目の遣り場に困っていた。到底似合わない活動的なスキャンティーのバックや、年頃の少女めいた尻が見えた時は、思わず顔を突っ込もうと思い、ギリギリで踏み止まったのは、離れた場所でこちらを監視する女達の匂いがあったからだった。 はっきり言える。涼白さんにミニスカは無理だ。守る為の様々な防御行動の出来ない子供にミニスカは履けない。 静也は幼女趣味はないが、幼稚園児や小学校低学年がパンツ見せて歩く理由が解った。 静也の脳裏には、性的に無警戒な涼白さんのパンツがこびりついて離れなかった。 涼白さんは美しい娘であることは最早疑う余地はなく、静也の隣にいるだけでフワフワと落ち着きがない理由を考えると、その場に抱き寄せ唇を奪うことすら可能であると思われた。 改めて、ラメで可愛くデコレーションされたTシャツから出っ張るおっぱいを確認した。 紀子より大きい。 今更ドキドキしていた。 「今更になって自分が年頃の童貞だって気がついたのよさ。今頃涼白さんの意外に大きい形のいいおっぱいに目が釘付けになってるのよさ。あのおっぱいに顔埋めて眠るのが今莉里のマイフェイバリットなのよさ。払底、うずうずしてるのよさ?」 それはないです。だって静也だし。 え?そうでしょう?静也?静也あああああああああああああああああ!! クラクラすんなお前えええええええええええええええええええええええええええええ!! 鼻の穴広がってるぞお前!お前の飼い主は誰だ?!散々人の尻に顔突っ込んどいてそれかああああああああああああああ!! 「ひふみよいむなやこともちろらね」 「式神呼ぶのはちょっと待つのよさ。邪魔したら涼白さん泣いちゃうのよさ。座り込んでえーんえーんされると抱きしめるしかないのよさ。罪悪感凄すぎるのよさ」 ぐ。確かに。紀子は砂を噛むように見守るしかなかった。 目の前にいるのは爬虫類系妖魅じゃない。ただの年頃の幼い娘だった。迂闊に傷つけたらえらいことだった。 涼白さんは赤くなって俯きながら、静也の匂いを感じていた。 あれ?匂いが変わった? デートはウキウキドキドキ誰だって発情するのよさ。涼白さん可愛すぎるから一発なのよさ。腕絡めておっぱい肘に当ててやれば静也如き童貞チョロいのよさ。 莉里はそんなことを言っていたので倒れそうになった。 静也君。私に噛みつきたいの? 人間はそんなことしない。ミザールはそう言っていた。 じゃあどうするの?普通の人間は、交尾する時どうするの? 前に莉里と見た映画では、確かーー。 ふ、ふにゃああああああああああ?! 脳内ベッドシーン再現で恥じらい死にしそうになっていた。 「そう言えば涼白さん。この後はどうしよう?実は、こういうのに慣れてないんだ」 「こ!こここ交尾の時は!首に噛みついて押さえつけてへ!ヘミが!う!うぎゃああ!」 ん!何を狂乱しているんだ?交尾?それはつまり、俺が、君と? はああああああああああああああああああ?! 静也も揃って狂乱していた。 座り込みそうになる涼白さんの肩を掴んで支えた。 涼白さんが身をよじった時、おっぱいがぷるんと揺れた。 顔はもう薔薇のように上気していて、目は充血していた。 「いや、違う。そうじゃない」 「へ、へへへへへ!」 「だから何を笑って。ヘミというのは、フェクダも言っていたが」 静也は、前に倒したアンフィスバエナのことを思い出していた。紀子を妊娠させようとした変態蛇だった。 「ふ、ふぇふぇ、フェクダはいつも発情してて、最初に私に噛みつこうとしたのはフェクダで、止めたのはミザールで。ああ影山さん!お兄ちゃん!どうしよう?!」 影山さんの名前を思い出した涼白さんは叫んでいた。 「そうか、あの双頭蛇、アンフィスバエナは君を襲おうとしたのか。君とは兄妹なのに」 「きょ、兄妹はそんなの気にしないわ。だって私達、トカゲと蛇だもの」 「違う。それは違う。涼白さん。君は人間だろう。君は卵で産まれたのか?」 「ううん。お母さんは、私を赤ちゃんで産んで、気がついたら妖虫を食べていたの」 「それがそもそもおかしい。胎生なら、母乳が出るはずだ。君は産まれた時授乳を受けなかったのか。そんな、産んでしまえばそれまでのような。俺の知っている人は、真琴さんは確かにバジリコックと霊的に融合しているが、一度として自分の子供に対し、そんな扱いをしなかった。俺の中では彼女は全く普通の人間だし、君も勿論人間だ。君が子供を産めば、それは、つまり」 思わず涼白さんは静也を見つめた。もう発情はしていなかった。真剣に、涼白さんの身の上を案じ、母親に、ゾーイに対して怒りを感じていた。 「君は全く普通の人間だ!霊的に変異可能だから何だ!君はもっと愛情を受けていなければおかしい!だって、君は!こんなに!」 掴む肩に力が入っていた。 「君はこんなに綺麗だ!」 涼白さんは息を飲んだ。こんなにはっきり、まっすぐそう言われたことはなかった。 「し、静也君?私は、莉里様も言ってたけど、ドジだし、トロいし、メイド長には怒られるし。私ーートカゲだもの」 「そんなことはない!君はこんなに綺麗だし可愛いじゃないか!紀子は君といろと言った。だから!ーーあ」 静也は気づき、涼白さんも理解していた。 あれ?静也君。紀子ちゃんがーー? その時、公園の奥の特設テントが吹っ飛び、ついで、こんな声は聞こえていた。 「涼白おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!大丈夫かあああああああああ!」 この公園では最近出土された遺跡を特設会場で一般公開していた。涼白さんはあまり気にしていなかった。そもそもそれどころではなかった。気づけば巨大な出土品が屹立していた。肩に影山を乗せて。 「え?ミザール?」 「おお。こんな所にいたのかお前達。クソ狐は?ああいた。莉里!」 莉里を呼んだのはジャスパーだった。 「いいところ邪魔すんなよさ。せっかく涼白さんの妊娠の序曲が」 「え?えええええあああああああああ?!」 今更ながらに自身が置かれている状況を認め、涼白さんは声を上げた。側から見たら、静也が涼白さんに迫っているのだった。 「涼白おおおおおおおお!お兄ちゃんが助けるぞおおおおおおおお!」 「あのでかいのは何よ?」 「稲荷山グループが発見した巨神像だそうよ。蛇が彫られていた。涼白が静也にクラクラしてて、影山の怒りに呼応して目覚めた。出土したのは栃木県、要するに海神信仰の名残。昔海だったんだってさ」 「言ってる場合?!大規模霊災じゃない!」 「だから莉里がいると踏んだ。こいつは大規模霊災運搬狐だから」 「あー。ありゃあ不味いのよさ。莉里の見たところあれを作った神官は童貞のまま虚しく死んでいったのよさ。つまりカップルは許しておけないのよさ。影山さんは妹に半分欲情してる気持ち悪い奴なのよさ。シンクロ率は天井知らずで上がっていってるのよさ。でもこれで済むとは思わないのよさ。巨神像のカウンター的存在の痕跡があるのよさ」 よく解らないところで姉妹は通じ合っていた。 「ほう。あんたも学んでるわね。実は出土した壁画には巨神像と争う悪魔の影が。ぶっちゃけると悪魔は背中に悪魔を背負ってた。こりゃあ要するにあれよ。つまり、童貞とゲイの醜い諍いが」 遠くから無数の褌姿の土で形作られた霊的存在が巨神像に襲いかかった。巻き込まれているのはライルとユーリだった。 「どうなってんだこりゃあああああああああああ?!おい!ホモ好き女!こりゃあ何だ?!」 「アースツーの海神、ブリューオイステルの使いだ。敵は兄弟神オルケウスの神像だ。童貞の守り神を襲うよう神が遣わした。まさかアースワンにブリューオイステル様がいらっしゃるとは。イケブクロで見た時腰を抜かしそうになった。神々すら恥ずかしい存在として秘されている。知っているのはブリューオイステル教壇の信徒だけだ。それは私の産まれた北の大陸の離島、トッカチン島にしかいない」 「ピンポイントでてめえのホームグラウンドじゃねえか!なんでこんなたくさんいやがるんだ!」 何とも馬鹿馬鹿しい異世界の神の諍いが始まろうとしていた。
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