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喫茶店を出ると、外はもう薄暗くなり始めていた。
「もうこんな時間。あっという間だったね」
遥が、京介の隣を歩きながら言う。
「うん。今日は楽しかったよ」
「ヤンキーをボコボコにして?」
京介が苦笑いを浮かべると、遥は笑って「冗談」と付け加えた。彼女の手が京介の手に触れる。京介は数秒考えてから、その手を握りしめた。
そのまま二人は、曲がり角を曲がって大通りに出た。綺麗に舗装された地面に、手をつないで歩く大きな二つのシルエットが現れた。
そのまましばらく無言で歩いていると、ふと遥が思い出したように言った。
「その眼鏡、外した方が格好いいよ」
京介は少し驚いて遥の方を見た。遥がガラスのレンズ越しに、京介を見ていた。気付かれたかと思ったが、彼女の大きな目からは、特にそれらしき警戒心は感じ取れなかった。
少しくらいなら、大丈夫だろう。それに、そちらの方が格好いいと言われて、断る理由はない。
「そう?じゃあ、外そうかな」
京介は頬が緩むのを必死で抑えながら、眼鏡を取った。京介の視界は、いたるところにある赤色を捉えた。
ところが、今朝のように意識が赤色に集中することはなく、別段眩しくもなかった。だが、もとの正常な目に戻ったのかというと、よく見るとそうではない。眼鏡をかけていたときと比べて、視界全体がかなり明るくなっているのだ。
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