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「よう、京介。まだそんなに慌てる時間じゃないぞ」
京介のバイト仲間であり、大学の友人でもある北見翔太は、馬鹿にしたように言った。京介は息を切らしながら、真っ青な顔でスタッフルームに飛び込んだのだった。
「滝森さん、なんか変ですよ。どうしたんですか?」
遥が心配そうに京介の顔を覗く。こいつはいつも変だろう、と翔太が笑った。
一方京介は、翔太の軽口にも、遥のお節介にも付き合っている暇は無かった。明らかに、目に異常が起きている。原因は何なのか。これは悪い病気か何かか。もしかしたら、目ではなく頭がおかしくなっているのではないか。
唯一分かっていることは、絶対に赤色を見てはいけないと言うことだ。今すぐ病院へ行きたかったが、外で赤いものを見てしまうのは怖いし、赤色が眩しい、なんて奇妙なことを口にすれば、気でも狂ったのかと思われるかもしれない。いや、実際に狂っているのかもしれないが。
「京介、レジ頼む」
翔太の声が聞こえた。考えれば考えるほど分からなくなる。結局京介は、とりあえず今日一日をなんとか乗り切ろう、という結論を出した。
はいはい、と、京介はあくまでいつもと変わらない口調を心がけて言った。
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