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「あのー、すみません」
ふと目を覆っていた手を外し、顔を上げる。目の前には、ひとりの男性客がいた。隣の翔太のレジを見ると、客がちょっとした列を作っていた。そこに並んでいる人は皆、こちらを怪訝そうに見ている。
自分が気味悪がられてると気づくと、京介はごめんなさい、と言い、慌ててレジ打ちを始めた。せわしなく腕を動かしながら、京介は心の中で、隣のレジが遥でなくて良かったと思った。こんな姿を見られたら、間違いなく敬遠される。
そうだ、これは大問題だ。今日は遥に気持ちを伝えると決めていたのだ。こんな自分を見られたら、二人きりになることすら嫌がられるだろう。
一瞬だけ、今日はやめておこうかと思った。だが、そんな考えは即座に頭から追い出した。今日はやめておこうと思い続けた結果、結局今に至るのではないか。何が何でも、今日。今日なのだ。ここでまた逃げるわけにはいかない。
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