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後日談
姉に借りた服を返したとき、何故か生暖かい目で見られた。
服は綺麗に洗って畳んであったし、どこもおかしなところは無かったはずだ。
なのに姉に変な顔をされる。
折角、狐に生まれたのに美しい瞳をそんな風に細めて何でそんな風にみられるのかがよく分からない。
「姉さん、そんな顔――」
止めなよという言葉は音にはならなかった。
「私の顔は私の好きにするわ。」
姉は笑う。それに、と一言言葉を付け加えてどうしたらいいのかよく分からない。
「まあ、上手くいったみたいで良かったわ。」
何もかも分かってる様に言われて思わず固まる。
昔からそんな風にすれば姉の思うつぼだということをよく知っているのに習性の様に固まってしまう。
蒿雀とのことを姉が知っている筈が無いのだ。
だから受け流して何もなかった様にするつもりだった。
「今、その相手の事考えたでしょう。」
姉は口角をあげる。
確かに少しだけ蒿雀の事を考えてしまった事は事実だけれど、そうやって言われてしまうと困る。
「アンタがちょっと綺麗になってるの腹立つわね。」
姉さんはさらに意味不明なことを言う。
本来狐というものは美しければ美しいほど力が強い。
平凡な見た目の俺の力は本質的に弱い。だから、嫌味以外で綺麗なんて言われたことは無い。
「何言ってるんだよ……。」
ありえないことを言う上に、さらに腹立つって言われてもどうしようもない。
先ほどから姉の言っていることは少しおかしい様に思えた。
「は? まさか気が付いてないの?」
あきれた口調で姉が言うが、呆れられる様な理由があるとは思えなかった。
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