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柚希は、ソファーの上で佐々木の頭をひざの上に乗せながら髪の毛を撫でていた。
「心ここにあらずだな」
ハッとして、俯いて佐々木を見やる。
「佐々木さんと、美玖さんの絆、俺が切っちゃったんですよね」
「ん?」
「だって、美玖さんはきっと佐々木さんのことをまだ……」
途中まで言い掛けていると、佐々木は柚希の鼻を摘まんだ。
「ーーっ」
「ないない。同志だって言っただろ。恋愛感情があるなら別れてないって。それに、俺は柚希のことが好きなんだから」
「でも……」
佐々木がそう思っていても、美玖は違ったんじゃないだろうか。だから、この部屋を掃除して、いつだって佐々木のことを思っていたわけで。
「だってな、あいつ、お前のことをあわよくばって言ってたんだからな」
「はい?」
「写真見せたら『かわいい子じゃないの。うわー、ペットに欲しい。週二で貸して』って言ったんだぞ。誰が貸すかって。柚希は俺のものなのに」
ふてくされたような顔をしながら、佐々木はギュッと柚希のスカートを握った。その手に柚希も手を重ねる。
ーーきっと、美玖さんは……。
強がりだったんじゃないだろうかと思う。けど、そのことは柚希の胸にそっとしまった。
ーー今は、俺のものだもん。誰にも渡さない。
再び髪の毛をさわさわと撫でていると、佐々木が口を開く。
「でもな、柚希。なんで、美玖のことは美玖さんで、俺のことは未だに佐々木なんだよ」
「えっと、言い慣れてるし」
「雅人って呼べよ。何度も言ってるうちに慣れるし、そのうちお前も佐々木になるんだろ」
「そのうち、ね」
独占欲をむき出しにする姿も愛らしいなと、佐々木の髪の毛を撫でながら柚希は、柔らかく微笑んだ。
*end*
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