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佐々木の顔を見て、ウソをついていないのか慎重に見極めようと思った。目の動き、表情筋、一挙手一投足見落とさないように。
「信頼できそうか?」
──……でも。
自分が求めているものと、佐々木が求めているものは違うかもしれない。今までのように睡眠の手伝いをすることで体温を感じたり、優しくされてしまったら勘違いをしてしまう。きっと自分は、佐々木の優しさを恋心とはき違えてしまうだろう。
それなら、やっぱり離れた方がいい。
「もう俺はあの店では働けません。店長のこともあるし。もう添い寝カフェでは働くつもりもないから……。やっぱり佐々木さんとは、これっきりだと思うんです」
だから、自分の想いを諦めようとしたこの気持ちを掻き乱さないで欲しい。
きっと少しの間は、悲しくて辛くて胸が張り裂けそうに痛いだろうけど、いずれ両親を失った時のように、少しずつこの気持ちも風化していくはずだ。
だって、一人は慣れている。どんな時だって自分は、一人だったのだから……──。
「それじゃ、俺が困る」
「こ、困るって言われましても……」
「俺は、お前無しじゃいられない」
躊躇いがちに伸ばされた手が柚希の両肩を掴んだ。
「……──ッ」
柚希は、佐々木の腕を掴み押し返そうとするも、力が強くてびくともしない。柚希は、対面の男の顔を見て驚いた。
──なんで? この人が、どうして……。
自分より苦しそうな顔をしているのだろう。
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