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 眼鏡の奥の瞳が不安そうな色で濡れていた。佐々木の姿に戸惑った柚希は、手の力が緩んだのと同時に、佐々木の大きな胸の中にポスッと顔が埋まる。 「え。あ、す……すみません」  急いで体を離すために、胸を手で押し返そうとしたら、逆に抱きしめられてしまった。 「は、離してください」 「離したら、俺の為に傍にいてくれるのか?」  その言葉に息をのむ。柚希は、トクトクという佐々木の心音を聴きながら静かに見上げた。 「俺は、お前のこのひざじゃないと眠れないんだ。醸し出す雰囲気とか、俺にとっては最上級の癒しだったんだよ。お前が離れて行ったら、俺はどうすればいい?」  真剣な目をしながら訴えてくる。その視線が気まずくて、わざと視線を外し「そんなの……」と、呟く。 「ユズの事は特別だった。だから、あんなに足しげく通って……。どうしてもユズが良かった。妻に別れを切り出された時でさえ、縋ることがなかったのに、お前だけは離れていくのが耐えられないんだよ」  今の気持ちは、本当だろうか。口先ばかりじゃないかと不安になる。
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