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 案内された場所は、柚希のバイト先から程近い、駅前の路地を少し進んでいったところにあるマンションだった。  こんな所に住んでいたのかと、キョロキョロとあたりを見渡す。そのまま一緒にエレベーターに乗り、佐々木は八階を押した。  まさか、気持ちが通じ合ったその日に、部屋に招待されるとは思っていなかった。    ──っていうか、どうすんだよこれ。  お店の個室とは違う完全密室。しかも、好きな人と二人きりの空間だ。  チラリと視線を佐々木に向けると落ち着いた大人の余裕さえ感じる。  ──緊張してんの俺だけ?  今まで恋愛と呼べる類のものは経験してないし、こういう時もどういう風に振る舞っていいのかもわからない。ぐるぐると悩んでいるうちに、あっという間に目的の階に着いた。 「この階で、降りるぞ」という佐々木の声に導かれるようにエレベーターを降りた。部屋の前で立ち止まった佐々木は「ここだ」と言い鞄の中からキーケースを取り出して鍵を開ける。 「ほら、上がって」  躊躇している柚希の背中に手を添え、中に入るように促された。 「お……じゃましまーす」  その場にしゃがみこみスニーカーを脱ごうと、靴紐をほどく。 「実はユズを連れて来る予定は無かったから、部屋の中がすごく散らかっているんだ」  そんな謙遜しなくても……と思ったが、リビングに踏み込んだ途端、目を丸くする。
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