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「え……!」  目に飛び込んできたのは、床一面に広がっている取り込んだままの洗濯物。キッチンに目を向けると、カップ麺の容器が積まれていた。  ──嘘だろ……。  柚希の知っている佐々木は、パリッとしたシャツを着ていて、アイロンのかかったハンカチも持っている。しまいには、鞄の中も色分けしてインデックスが貼ってあるファイルが入っていて、きちんと整理整頓がされていたのだ。どうしても、この部屋の状況と普段の佐々木が結びつかない。 「──……っ」  言葉を失い、呆然と立ち竦んでると「汚いだろ」と佐々木は苦笑する。  ──汚いとかのレベルじゃ。  そう思った言葉をぐっと呑み込む。 「えっと、これは……一体?」 「俺、片付けが苦手なんだよ」  そう言いながら佐々木は、床に散らばった洗濯物をかき集めていた。完璧な人だと思っていたのに、実は片付けが苦手で、部屋が汚いというギャップに笑いが込み上げてくる。 「佐々木さんも、人間なんですね。なんでも完璧にこなせる人かと思っていました。真面目で神経質で、そして隙がないというか……」 「はぁ? そんなことないだろ」 「いいえ。いつもピシっとしたスーツだし、鞄の中も整理整頓されていましたし。寝不足なのも最初は神経質だからかなって、思っていたんですよ」  そういえば、最初の接客の時も、真面目な部分が垣間見えていたのを思い出す。 「女性なんだからこういう仕事はって、怒っていましたもんね。なのに、部屋は汚いとか、なんなんですか!」  洗濯物を別の場所に避難した佐々木に、ソファーにどうぞと、促されて座る。
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