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「あ、気にしないで。この部屋に置いていたものを取りに来ただけだから。倉庫代わりに使わせてもらってるの」
「倉庫……?」
「それにしても……」
柚希の顔に自分の顔を近づけて眺めた後、女は深い溜息を零した。
「女子高生を家に呼ぶってどういう了見かしら? 犯罪じゃないの。同僚の横領でショック受けてどうにかなっちゃったのかしら」
「は?」
「あなたもねー、あんなおじさんについて歩くなんて、高校生同士で健全な交際しなさいよ」
「ちがっ……」
否定の言葉を途中で止めた。自分の格好を今更ながら思い出して青ざめる。
ーーなんで、今日に限ってこんな格好しちゃったんだよ、俺。
今日は、月末最終営業日。
だから、疲れている佐々木を癒そうと思い、あの時と同じような制服を用意した。そして、びっくりさせようと着替えて待っていたのが裏目に出てしまった。
ーー人が来るとか思わないじゃん。
自分の格好を見ながら嘆息していると「そうだ、私が言ってあげる。別れたくても、別れづらいもんね」と、にっこりと微笑まれた。
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