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コーヒーを啜りながら、目の前にいる女を見やる。
ーー赤いルージュ。モデルみたいな体型。綺麗な人……。ま、まさか。
「さ、佐々木さんの奥さん」
テーブルに手を突き、勢いよく立ち上がった。
「元、ね」
「あ、も……と」
「私、佐々木美玖」
ーー佐々木?
同じ苗字のままで、なんでまだこの部屋の鍵を持っているのだろうか。確か、佐々木は離婚をしたけど仕事も同じで同志と言っていた。
愛情はないともーー。
けれど、離婚したのに旧姓に戻らず、合い鍵を持っていて自由に来ることができる関係で。
そう思うと、胸がキュッと軋む。
呆然としながら、美玖を眺めていると「まぁ、座んなさいよ」と、ケラケラと笑いながらコーヒーに口をつけた。
「はい」
椅子に腰を下ろし、長い息を吐く。
「かわいい顔してるけど、雅人とどこで出会ったの?」
「えっと……」
添い寝カフェの常連さんでーーとは、言えない。
高校生と付き合っていると思われているのも微妙だが、そういうところに出入りしていると思われたら、益々佐々木の心象が悪くなる。
視線を彷徨わせながら、どう答えるべきか思案していると。
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