ビター・スゥイート・ホーム

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***  コーヒーを啜りながら、目の前にいる女を見やる。    ーー赤いルージュ。モデルみたいな体型。綺麗な人……。ま、まさか。 「さ、佐々木さんの奥さん」  テーブルに手を突き、勢いよく立ち上がった。 「元、ね」 「あ、も……と」 「私、佐々木美玖(ささきみく)」  ーー佐々木?  同じ苗字のままで、なんでまだこの部屋の鍵を持っているのだろうか。確か、佐々木は離婚をしたけど仕事も同じで同志と言っていた。  愛情はないともーー。  けれど、離婚したのに旧姓に戻らず、合い鍵を持っていて自由に来ることができる関係で。  そう思うと、胸がキュッと軋む。  呆然としながら、美玖を眺めていると「まぁ、座んなさいよ」と、ケラケラと笑いながらコーヒーに口をつけた。 「はい」  椅子に腰を下ろし、長い息を吐く。 「かわいい顔してるけど、雅人とどこで出会ったの?」 「えっと……」  添い寝カフェの常連さんでーーとは、言えない。  高校生と付き合っていると思われているのも微妙だが、そういうところに出入りしていると思われたら、益々佐々木の心象が悪くなる。  視線を彷徨わせながら、どう答えるべきか思案していると。
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