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「まさか、出会い系?」
「はい?」
「あーー、ついに、手出しちゃったかぁー」
額に手をあて、美玖が椅子の背もたれに体を預け天を仰いだ。そしてすぐに、厳しい顔をしながら柚希の顔にずいっと近づける。
「出会い系って……、そんな」
「ごめんなさいね。もう、雅人にはキツく言わなきゃ。でも、あなたもあなたよ。お小遣い欲しさに近づいたかもしれないけど、あの人つまんないでしょ。頭堅いし、冗談も言わないし、何考えてるかわかんないし。騙すの簡単だろうけど、そういうの免疫ないから辞めてくれないかしら?」
「なっ!」
バンッと机を叩き、立ち上がる。わなわなと怒りに震える拳を、ギュッと握りどうにか耐えた。
元奥さんだとはいえ、言っていいことと悪いことがある。こんな格好をしている自分は仕方がないが、佐々木を悪く言われるのは許せなかった。
大きく息を吐き、美玖を不機嫌な顔で睨みつける。
「黙って聞いてたら、なんなのあんた! 俺と佐々木さんのこと何にも知らないくせに、佐々木さんのこと悪く言わないでよ」
机をバンバンと叩きながら抗議する。
子供みたいだと思ったが、一度してしまったものはもう止めることが出来なかった。
「美玖さんは、離婚したんでしょ。俺が、佐々木さんの今の彼氏なの。援交でもないし、高校生でもない……。俺には、もったいないくらいの人なんだから」
「柚希」
急に肩を掴まれた柚希は、恐る恐る声の主を見上げた。
「さ、佐々木さん……」
「まぁ、座れ」
頭を撫でられ、肩を下に押された柚希は、そのまま椅子に腰を下ろした。
ーーやっちゃった。元奥さんに啖呵きるとか……。
バツの悪そうな顔をして、俯いていると、横から盛大な溜息が聞こえる。
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