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「美玖、おまえなぁー。いい加減にしろよ。柚希をからかうなって」
「なによ。雅人が悪いんでしょ」
「なにが?」
「恋人ができたって嬉しそうに言ってたくせに、ぜんぜん紹介しないんだもの。だから、直々に見に来たんじゃない」
美玖は、髪の毛を掻き上げながらふてくされた声を出す。
ーーは?
柚希は、俯いていた顔を上げ目を丸くする。
「写真見せたじゃないか。それで十分だろ」
「いやです。実物見たかったの。雅人にもったいないくらいかわいいんだもの。それに、今日だって女子高生の制服着て待ってるなんて、健気でもう最高じゃない」
「お前には会わせたくないんだよ。俺のものなんだから」
佐々木と美玖のやりとりが、頭に入ってこない。
ーーどういうこと?
美玖は、すでに柚希の存在を知っていたということなのだろうか。
それで、確かめに家に来た。
だけど、何のために?
「この家に入ったときだって、泥棒かと思ってサランラップの芯を持ちながら戦おうとしてたのよ。もう、かわいいったらありゃしない」
ーーもう、辞めて欲しい。
そんなのかわいくもないし、パニックになってついしてしまった行動なのだ。大人なのに、そんな子供じみた真似、バラされたくなかった……。
「み、美玖さんは、俺のこと知ってたの?」
眉毛を下げ、不思議そうな面持ちで美玖を眺める。
「ごめんねー。つい、雅人が柚希くんのことノロケるものだから、会ってみたいって思って来ちゃった」
頭を掻きながら、美玖は申し訳なさそうに謝る。ちらっと横目で佐々木を見やると、困ったように眉を八の字に下げていた。
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