1873人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
「ごめん。美玖は、押しが強くて何度も断ったんだけど、押し切られてしまって……」
「でも、今日来るなら俺は、こんな格好」
「それ、俺のために着てくれたのか?」
「月末だし、仕事で疲れて帰ってくるから、癒そうと思って久々に女の子の服着たのに、他の人……元奥さんに見られるなんて、最低っ!」
口を真一文字に結び、拳をギュッと握り直し俯いた。
ポンポンと、頭を軽く叩きながら佐々木は「ごめんな」と優しい声音で謝る。
「柚希くん、ごめんね。雅人が、本気で好きだっていう子に会ってみたかったのよ。本当に雅人のことを思ってくれてるのね」
「そ、そんなの当たり前です!」
俯いていた顔を上げ、美玖を見る。
「佐々木さんが俺にくれる愛情を返してあげたいし、そりゃぁ、年下で頼りないかもしれないけど、誰よりも佐々木さんを想ってるから」
美玖は、柚希のその言葉を聞いて微笑みながら口を開いた。
「そう……安心した。柚希くんが、あのどん底だった雅人を救ってくれたんだもんね。私じゃ、あの時の雅人を助けることは出来なかったし、雅人をよろしく頼みます」
深いお辞儀をした美玖は、椅子から立ち上がって鞄に手をかける。
最初のコメントを投稿しよう!