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 ジリジリジリジリ……と、けたたましいアラーム音が鳴り響き、柚希はハッとしてアラームを止めた。膝の上で寝息を立てていた佐々木が、ビクッと身体を震わせ、眩しそうに眉根に皺を寄せながら目を開けた。 「あ、ごめんなさい。うるさかったですよね」 「これは、どういうことだ?」  険しい顔をしながら、柚希に視線が注がれる。 「佐々木さん、私の膝の上で良く寝てましたよ。少しは、身体が楽になりましたか?」 「お前、いつもこんなことをしているのか?」 「え?」 「客を無理やり連れてきて、体を差し出すっていう」  体を差し出す? この人は何を言っているのだろう。自分は、性的なことは一切せず、ただ膝を一時間提供したに過ぎない。あとは、ちょっとの子守唄と、髪の毛を撫でただけだ。 「はい? 私、佐々木さんとヤってませんけど?」 「や、やってない? そんなの当たり前だ。でも、膝を、生足を俺に差し出したじゃないか! 女の子なんだから、もう少し自分を大切にしたらどうだ」  不機嫌そうに佐々木は、右手の人差し指で眼鏡のフレームをクイッと上げた。衣服や佇まいで、薄々潔癖ではないかとは感じていたが、面と向かって言われるとカチンとくる。 「生足くらいで、そんなに怒らないでください。その生足で寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ていたのは誰ですか!」  一瞬にして紅潮する顔を誤魔化すかのように、佐々木が俯く。 「クソッ」と言いながら、財布からおもむろに二万円を取り出す。そして、乱暴に柚希の目の前に差し出した。
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