3-1

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 結局あの後、柚希の働いているバイト先に、三週間経っても佐々木は現れなかった。部屋を出て行くときのあの態度を見れば、当たり前といえば当たり前だったのだが、また来てくれるのではないかと少し期待をしていたのも確かだった。  ――眠れてるかな?  こればかりは気を揉んでも仕方がない。けれど、眠れないと頑なに言っていた人が、自分の膝の上では穏やかな寝息を立てていた。  ――でも、迷惑だった。俺はただ……。  放って置くことが出来なかった。手を差し伸べて近くで癒してあげたかった。なのに、拒否された。  たった一度、膝を貸しただけの相手で、いつものお客さんたちと一緒のはずなのに忘れられない。どうしても気になってしまう。この三週間、何度も何度も佐々木のことを想っては、なぜか胸が激しく軋んだ。その理由もわからないままに。  柚希は、その思考を断ち切るように頬を両手で挟みバチンッと叩いて「よし! 今日も元気にお客さんを癒すぞ」と、気合を入れた後、店のドアを開けた。
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