最高のいとこ、最高の友達

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 本当はこんなことになるはずじゃなかったのに。こんなことをしちゃいけなかったはずなのに。  俺がどうかしちゃったんだ。だから瑞希も……そう、彼女を自分で巻き込んだんだ。 「蒼……? どしたの? 食べないの?」 「――! ううん、違うよ」  慌てて目の前の現実を見る。  いかにも女子が好きそうな落ち着いたカフェ。植物に囲まれていて森の中にいるよう。しかも外から自然の太陽光がふわっと差し込んでくる。森林浴をしているような気分だ。  そして向かい側には瑞希がいて、ナイフとフォークを持って目をきらきらさせている。太陽なんかよりずっと眩しい。 「はうー……可愛いなあ……、どこから食べるのがいいと思う?」 「食べる前にちゃんとこいつかけなきゃ」 「は――っ、いけない忘れるところだった。だってこんなポットじゃ可愛くて中に蜂蜜入ってるなんて気付かないよぉ、プー〇んだって見逃すよぉー」 「――ったく何言ってんの……」  蜂蜜のポットは確かにただの置物かと思うくらい小さな、白い牛乳瓶みたいな陶器だった。でもちゃんとバターだとかシナモンのトッピングの真ん中に並んでるから。  何か入ってるだろ、くらいは疑うんじゃないかな。  でもいい。  瑞希が可愛いから。呆れるくらい可愛いから。ポットなんかよりもずっと……。  いかにもデートで来れそうなカフェに、俺と瑞希は2人で来ている。――ただの「スイーツ友達」として。  最高のいとこ。最高の友達。  もう俺たちはそれ以上にはなれない。  なれない約束をしたからこうしてスイーツ巡りができるまでになった。いとこや友達とスイーツを食べ歩くのなんてざらだもの。何もおかしくないもの。  それに。  もう瑞希には――他の男がいるんだもの。  だから伯父さん伯母さんに、「瑞希の様子見てくるので」と言って出かけられるんだ。
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