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でもどうして。
どうしてこうにまでならないといけなかったんだろう。罪悪感も道を逸れる感覚もなく瑞希と接することができているのに、どうしてそのためにこうならないといけなかったんだろう。
正直俺には未だに分かりそうにない。
それは未練かもしれない。だけど「未練をなくさ」ないと俺は彼女にこうして会えない。だからなくす。なくすようにしている。
瑞希の屈託のない笑顔を見て、自分も屈託なく笑っているように錯覚して――それでいいと思う。
彼女の屈託のない笑顔がどの程度本物かはさておき。
今日はスキレットに入った分厚いパンケーキを食べにこのカフェに来ていた。
「……蒼、やっぱ変」
「――ん? そう?」
いけない。考え事をし過ぎているみたいだ。
瑞希は進まない俺の分をじっと見つめている。
「好きじゃない……はずはないよね? パンケーキ好きだよね……お腹痛いの?」
「あっ、あぁ、本当に違うよ」
食べるのに集中できてないのを気にしてくれたんだろう。
慌てて首を振るって、ナイフとフォークをスキレットの中央に突き立てる。
「あーっ蒼、全部かけるの忘れてるよ! あたしにはちゃんと言っといて何それー」
「違うったら……、ほら、切れ目を入れておいてこのくぼみに入れるんだ……」
「あーずるい! あたしもやろ……」
瑞希。可愛いね。可愛くて……本当に大好きだよ。
瑞希は……もうすっかり新しい彼氏に恋をしてしまったのかな。
俺が言ったこと、もう忘れちゃったかな……。「どうやったって瑞希を一番に愛している」だなんて、付き合えていた頃の浮かれで口走った戯言にされちゃったかな。
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