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 事の始まりは5日前。今話題の謎解きゲームに参加した美月たち含め10人の老若男女。会場となる屋敷は、10年ほど前にそこに住んでいた者たちが惨殺された、実際の殺人現場。その事件は未だに犯人が捕まっておらず、今回はその屋敷に宿泊をしつつ、謎を解き明かそうという企画だった。  屋敷の玄関ホールにて、主催者の男からの説明が始まる。 「基本的に行動は自由です。ただ宿泊を楽しんでも良し。謎解きに専念するも良し! また誰と行動するのも自由。お友だち同士でも、グループを作っても構いません。また答えを共有し合うのも良しとしております。本当に自由にやってくださってかまいません!」  男の声が、高らかに響く。 「ただし、食事と就寝時間は一緒にしてください。朝食は7時。昼食は12時。夕食も7時です。就寝時間は23時です」 「自由と言いつつ、結構、制限されるのね」  恵子の呟きに、美月も同意する。 「それと謎解きに詰まってしまわないように、毎日3時にヒントを配ります。なのでその時は食事を取る大広間に集まっていただきますよう、お願いします。  それではゲーム開始です!」  説明の締めの言葉に、参加者たちはパラパラと動き出す。  美月も恵子と一緒に、屋敷の探索を開始した。 「なんかここで本当に殺人事件が起きたとは思えないほど、きれいだね」 「事件があったのは、10年くらい前だもん。それにこうして謎解きゲームに使われるくらいだから、主催者さんが管理してたんじゃないかな?」 「ということは、本格的にこの迷宮事件の謎解きはできないわけか」  落胆する恵子に、美月は苦笑する。 「恵子ちゃん、好きだよね。その……人がいっぱい死んでる事件」 「ちょっと! その言い方は、語弊があるでしょ! あたしは謎解きと犯人の心理を考えるのが好きなだけ」 「うーん。わたしは怖いなぁ」  するとケラケラと、恵子が笑う。 「美月は怖がりだもんね。今回のも、無理に付き合ってもらってごめんね?」 「ううん。こっちこそ、お金、出してもらっちゃってごめんね」 「いいの、いいの! あ、トイレじゃん! こういうところに、凶器が隠されてたりして。おお! しかも男女で分かれてる。金持ちねぇ。美月、ここ調べよう!」  そう言って、恵子は遠慮なく入っていく。 「ま、待ってよ!」  置いていかれないように、美月は慌てて恵子の後に続く。
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