1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

 その後、2人は客室に厨房、浴室に最後に玄関まで見て回った。その時、ボーンボーンと時間を知らせる鐘の音が鳴り響く。  美月が腕時計を確認する。 「あ。もう三時だ」 「大広間だっけ。行こう」 「きゃ――!!」  2人が向かおうとした直後、甲高い悲鳴が響きわたった。 「え? な、なに?」 「広間のほうだよ。行こう!」  恵子は美月の手をひいて、大広間へ向かう。  広間の中では、口元を押さえたり、座り込んでいる参加者たちがいた。 「ちょっと、どいて!」  恵子は固まっていた人々を押しのけて、美月と一緒に先頭に立つ。 「「っ!?」」  煙突の上から落とされたのか、主催者の男が煤だらけで、胸を包丁で刺され、死んでいた。 「なっ!? い、いったい、どうして……」  がこんっと音を立てて、暖炉の上に飾られていた絵画が巨大モニターと入れ替わる。  一同が緊張した面持ちで見つめていると、画面が映りだした。そこには、覆面で顔を隠した者が現れる。 『ゲームに参加する者たちに告げる。この中に、かつてこの屋敷に住む者たちを惨殺した犯人がいる。犯人を突き止めなければ、家族が殺された三時に、一人ずつ殺していく』  ブツッと音をたてて、画面が消えた。 「な、なんだよそれ!」 「この中に犯人がいるなんて……」 「おまえじゃねぇのか!」 「そんな事件のことなんて、知らねぇよ! これはただの遊びだろ!?」  参加者たちが仲間割れをするかのように、騒ぎ出す。 「冗談じゃないわ! 私はもう帰る!」  一人の女性がそう言って、玄関に向かう。 「ちょっと! 逃げるつもり!?」  恵子は女性を追いながら、そう叫ぶ。 「そうよ! ここにいたら、殺されるかもしれないんでしょ!? いやよそんなの!」  彼女の言葉にそう返し、女性は玄関のドアノブに手をかける。 「いっ。あ……」  突然、女性がばたりと倒れた。 「ど、どうしたのよ」  恵子が覗き込むと、女性は目を見開き、口から泡を吹いていた。 「え? ま、まさか……」 「僕が見よう」  恵子を押しのけ、眼鏡の青年が女性の脈を調べ、持っていたペンライトを彼女の目に当て、瞳孔の動きを調べる。  しばらくして彼は顔を上げ、小さく首を振った。 「……死んでいる。どうやら、ドアノブに毒が塗られた針が仕掛けられているようだ。かなりの猛毒で、一瞬で心臓を止めたらしい」 「毒? いつのまにそんなものが」 「それはわからない。だが、他の外に通じるドアにも同様の仕掛けがあるかもしれない。窓もはめ込み式で開くことは無い。  僕たちはこの屋敷に閉じ込められたと考えるのが、妥当だろうね」  青年の言葉に、一同の顔色が恐怖で染まる。  美月は恵子の袖を引っ張った。 「け、恵子ちゃん」 「大丈夫。美月のことは、あたしが守ってあげる。……こんなところで死んでたまるか。絶対に、犯人を突き止めてやる」  恵子は美月の手を力強く、握りしめる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加