私は彼氏ができない。

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どんな子だったけ…と思い出そうとするけれど、ぼんやりとしか思い出せなかった。同じクラスなのにね。あまり話したことがないからかもしれない。それでもぼんやりとしか思い出せないなんて我ながらひどいよね。 「…よかったらお茶していきませんか?」 おばあさんは桜と柏の頭を撫でながらにっこり言う。美味しいお菓子もあるのよ、と言うと桜と柏の目が輝いた。 「お姉ちゃん!」 二人は私をキラキラとした目で見つめる。私だって美味しいお菓子は魅力的だ。だけど、ここで長居してしまったら家事ができなくなる。せっかくの魅力的なお誘いに私はおばあさんに軽く事情を話し、頭を下げた。 「あらあら、じゃあまた時間があるときに来て頂戴。いつでも歓迎するわ。じゃあちょっと待ってて。本当に美味しいお菓子だからお家に持って帰って食べて。あとこのオレンジ。落ちたもので悪いけど本当に美味しいの。この世で一番美味しいオレンジよ」 そう言って、お菓子の入った紙袋とコンビニの袋にオレンジを入れておばあさんは渡してくれた。
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