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決意を新たに
「うわ、最悪。会長じゃん...」
「どの面下げて食堂に来てんだよって話しだよな...」
「あんな無能、とっととリコールされればいいのに。」
食堂についた俺を出迎えたのは、以前とは180度異なる、だがここ数日ではすっかり聞きなれた、俺への中傷の嵐だった。口々に向かってくる憎しみを込めた悪態に、からだが強張り、急激に心臓が冷えていくような感覚に襲われる。
だがそんな周りを物ともせずに、俺の腕を掴み平凡生徒は歩みを進めていった。
そしてようやく目的の場所に辿りついたのか、不意にぴた、と歩みをやめる。突然立ち止まられたから、背中に思い切り顔を打ち付けてしまった。
む、突然立ち止まんなよな。顔がひりひりすんじゃねえか!
さすさすと、ぶつけたところを空いている方の手で擦っていると。不意にその腕を、誰かに取り上げられた。
「擦ると赤くなるよ」
「!ーみやせ、」
相変わらずの無表情で、だがどこか優しく感じる動作で、ふわりと頬を包まれる。
あ、好きな人に触れられてる。そう自覚した瞬間、どくん、と心臓が破裂したみたいに跳ね、全身の温度が沸騰したように熱くなった。
「み...み、やせ...な、なんでここに...」
いるんだ。
そう言い終る前に、俺の心臓のメーターが振り切った。恋する乙女か、と我ながらツッコミたくなるが、よくよく顧みればもしかしたらこれが俺の初恋というものなのかもしれない。
つまり三谷瀬が好きだと自覚した途端、どうなって接すればいいのかわからなくなってしまった。その結果が、これだ。へたれか。
「...というか会長をここに呼び出すよう指示したのがこいつで、俺はただそれに従っただけ」
俺の腕を離しながら、やれやれといった顔つきの平凡生徒。え、ってか今、
「なんで...?」
予想外の言葉に、ぱちぱちと瞬きしながら三谷瀬を見る、またふわりと笑われた。
「また泣いてんじゃないかと思ったから」
いま俺がいる場所は、きっと暗闇なんだろう。右も左もわかなくて、光に導いてくれる誰かもいない。真っ暗な暗がりの中助けを呼ぶこともできなくて一人立ち止まっていた。そんな孤独感。
光なんて、もう見れないと思っていた。だから逃げだそうと思った。孤独に耐えられるほど強くないから、なにもかもを放り出そうとした。
「っつか腹減った。なんでもいいから早く食おうぜ」
「そうだね。あ、でもナナの分なら先にもう頼んであるよ」
「はあ?なに勝手に...って予想を裏切ることなくまたオムライスかよ!なんでおまえはいつもなにかとつけて、俺にオムライスを勧めたがるんだよ!」
「一番似合うと思ったから」
「オムライスが似合うって、俺どんな人間だよ!」
一度失った信頼を再び取り戻すなんて、そんなの困難極まりないってことくらいわかってる。全校生徒に与えてしまった失望は、そう易々と癒えてくれるもんじゃないってこともわかってる。
だけど
「なにそんなところで突っ立ってんの?ほら、おいで」
だけど、思い出した。
なんで俺が生徒会長なんて役職についてんのか。それはなにも、見返りを求めていたわけではないのに。ただ信じたかった、守り抜いていたいだけだった。
(...そういや、凌汰との約束もここだったな)
いま思えば、あれが最後のあいつとの約束だったのか。果たせなかった、後悔ばかりが募るそれは、あまりにも苦すぎるものだが。それでも俺は守り抜いていくんだ。
「....ありがとな。三谷瀬も、七宮も」
おれはもう、逃げださねえ。
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