Fly high

4/10
前へ
/10ページ
次へ
優衣(ユイ)が……妹が門限破ってばかりで、受験勉強をおろそかにしてるって」 「社長がご立腹なのか」 「そう。下手なやつに頼めないし、おまえ塾でバイト経験あるから大丈夫だろ」 「まさか土日に?」  だったら即お断りだ。俺のプライベートタイムがなくなる。 「週に何回か、平日の夕方から夜。勉強に当てる時間は仕事を免除してやる」 「そのぶん残業とか言わないよな」 「できる範囲でおれが引き受ける」 「ふうん」  そっけなく相づちを打ったが、かなり心が動いていた。勉強を見るのはだるいが、仕事を離れて息抜きができるのはいい。 「優衣さん、門限破って豪遊してるのか」 「どんだけ破天荒なイメージだ。部活だよ」 「なんの」 「文芸部」  なんとまた地味な。 「地味とか思ったろ」 「いや」 「門限に間に合う部活が茶道部と文芸部だけだったんだ。ちなみに門限は十八時」  それはひどい。どこにも遊びに行けないじゃないか。箱入り娘とはいえ、あまりに不憫で同情する。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加