122人が本棚に入れています
本棚に追加
「優衣が……妹が門限破ってばかりで、受験勉強をおろそかにしてるって」
「社長がご立腹なのか」
「そう。下手なやつに頼めないし、おまえ塾でバイト経験あるから大丈夫だろ」
「まさか土日に?」
だったら即お断りだ。俺のプライベートタイムがなくなる。
「週に何回か、平日の夕方から夜。勉強に当てる時間は仕事を免除してやる」
「そのぶん残業とか言わないよな」
「できる範囲でおれが引き受ける」
「ふうん」
そっけなく相づちを打ったが、かなり心が動いていた。勉強を見るのはだるいが、仕事を離れて息抜きができるのはいい。
「優衣さん、門限破って豪遊してるのか」
「どんだけ破天荒なイメージだ。部活だよ」
「なんの」
「文芸部」
なんとまた地味な。
「地味とか思ったろ」
「いや」
「門限に間に合う部活が茶道部と文芸部だけだったんだ。ちなみに門限は十八時」
それはひどい。どこにも遊びに行けないじゃないか。箱入り娘とはいえ、あまりに不憫で同情する。
最初のコメントを投稿しよう!