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詩の最後に『Yui Rikawa』と記されていた。彼女の詩か。確かに金曜日は浮き立つような解放感がある。
すんなり言葉が入ってくるなあと読み返してると、落とし物の主がえらい勢いで廊下の丁字路からコーナリングを抜け走って来た。長い髪が後ろになびいてる。時速にしたら何キロだ?
俺の手にしたものが答案&作品集と気づいた優衣さんは、短い悲鳴を上げた。そして目標物まであと五メートルというところでスリッパが脱げ、派手に転んだ。
「……大丈夫か」
スカートがめくれて下着見えてるけど。
「み、み、見……!」
「見てないよ」
白いレースの下着なんて。しなやかに伸びたナマ脚が色っぽかった。乱れたブレザーの制服を素早く直し、優衣さんが恥ずかしそうに俺を見上げた。
“世界は広い。まだまだ知らない世界が無数にあって、それを手に入れるのも遠ざけるのも、自分次第だ。”
もしかしたら優衣さんは、未知の世界を俺にくれる人かもしれない――。
なぜかこの時、そう思った。
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