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「お兄ちゃんの親友さんですから、覚えてますよ」
会食のとき末席に座ってたわたしは話す機会がなかったけど、素敵男子の佐原さんを忘れるはずもない。時々思い出して、にまにましてたのは秘密。
「血が出てる」
見ると右膝から少し血がにじんでいた。佐原さんは苦笑い。
「転んですりむくとか、優衣さん面白すぎるな」
「もおやだぁ……」
点数とポエムを見られたうえ、子供っぽくすり傷を負った身の上は、哀れで落ち込むに値する。
「膝立てて」
「はい?」
言われた通り膝を立てた。すると、
「なめときゃ治るよ」と佐原さんがとてもナチュラルに、わたしの膝に唇を寄せて――。
「あ……だだだだめです!」
私は急いで膝を引っ込めた。佐原さんがわたしの動揺っぷりを見て、ふ、と吹き出す。もう、からかわれた!
「いたいけな女子高生をもてあそばないでくださいっ」
恥ずかしい……。男性に免疫のないわたしは、いちいち過敏に反応してしまう。そんな自分がすごくいや。
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