No.26 Wish upon a star

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クリスマス当日。 朝から神戸の実家に行き、親父から車を借りた。 車を借りに来ただけなのに、なぜか両親をはじめ姉貴も兄貴夫婦も俺を出迎えた。 「何や?」 玄関で迎えられた俺が問い掛ける。 「クリスマスに車貸してって言うから、てっきりデートやと思ったら…アンタ一人?」 「どこかに待たせてるん?こんな寒い日に可哀想やないの。連れてきなさいよ」 「車、洗車しといたからピッカピカやで。車内も完璧や」 「どこにいるん?」 義姉以外が口々に言う。 マジでうざい。 「誰もどこにもいないから」 「そんな下手な嘘を」 母が笑う。 「クリスマスにわざわざ車借りて一人でとか、誰が信じるんよ」 姉貴が笑う。 「いや、マジで。香川の同期に会いに行くだけだから」 「あっ、香川の子なん?」 なぜそうなる。 どんな想像力だよ。 本気でうざい。 もう何でもいいから、早く脱出しようと、俺は親父から車のキーを借りて車庫に向かう。 家族に意味なく見送られて、俺は香川に向かった。 神戸から香川まで2時間ほどの距離。 俺は車を走らせて、水木の自宅へと向かう。 親父が言っていた通り、車は中も外もピカピカだった。 塵一つ落ちていないのは、俺のためじゃない。 勝手にされたことのに、何だか申し訳ない気持ちになる。 一度だけ、この車で響とデートした。 あの時は…想い出耽ってしまう。 過去の自分に嫉妬してしまう。 何でもっと大切にしなかったと… 結局いつもの自己嫌悪。 そんな香川までの道程だった。 ナビ通りに向かっていると、途中、いつくらいが到着予定なのか水木からLINEで問い合わせがあった。 予定では15時くらいだと伝えていた。 予定通り迎えてる。 《予定通り向かってる》 そう返すと、了解とスタンプが届いた。 何の確認だ? そう疑問に思ったけれど、特に深くは考えなかった。
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