No.2 heartbreak

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「あかんかったぁぁぁ!!」 頭を抱えて居酒屋のカウンターテーブルに勢いよく伏せた松山。 ビールジョッキが倒れないように、俺はジョッキを彼から離した。 「なんでやねん!お姫様は王子様に助けられたら恋するんちゃうんか!?」 顔を上げて必死に俺に問い掛ける。 「知らねぇよ」 「“彼氏がいるので、ごめんなさい”って何やねん」 「そのまんまだろ」 「俺が助けてんぞ!彼氏は何もしてへん!」 いや、お前は助けていない。 ツッコミたかったけれど、言えばまた煩くなると思ってやめた。 「研究の受付に来たから、絶対にこれは運命やと思ったのに…」 新人研修合宿から、時は既に3ヶ月を過ぎていた。 浅野はインフォメーション課に配属されて、俺や松山の居る研究室のある受付を担当していた。 松山のチープで壮大な計画は見事玉砕。 だけど、3ヶ月かけたその熱意は、ある意味尊敬する。 こんなキャラではあるけれど、彼は決してバカではない。 関西で1番の大学を出て、そこから大学院へ進学している。 高校の模試で“松山佑介”の名前を何度も見たことがある。 彼は必ず近畿模試ではトップを走り、全国模試でも必ずトップ5には入っていた。 学生の時から知っていたわけでも、面識があったわけでもない。 だけど、いつも模試の成績優秀者に並ぶ彼を俺は覚えていた。 だからか、松山とは昔から知ってるような感覚で直ぐに打ち解けた。 同じ関西出身ってこともあるだろうけれど…。 「やっぱ天罰やな」 「はっ?」 「嘘ついた罰や」 急にしおらしくなる。 「人の手柄を自分の手柄にした罰や…」 松山は肩を落としてビールジョッキに手を伸ばす。 「ごめん!遅れた!」 その場に勢いよくやって来たのは水木だった。 営業の後で合流すると聞いていた。 俺の横に水木は座り、反対側の俺の横に居る松山を覗き込む。 「松山どうしたの?」 その問い掛けに、松山は立ち上がって水木を睨み付ける。 「女子大生の彼女いるお前に話すことちゃうわ!」 完全な逆恨みで、松山は鞄を持った。 「いや、春に大学卒業したから、もう女子大生じゃないから」 「そんなんどっちでもええわ!!」 松山はそう言って叫んで、店を出て行った。
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