No.3 destiny

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2年半海外で勤務して学んだ。 そして、日本に帰ってきた。 「もう暫くは海外勤務ないん?」 帰国後、ずっと帰ってなかった実家に帰って夕食を食べているタイミングで母親に問い掛けられる。 「多分」 「そう、ちょっと安心したわ。海外行ったら本当に2年半も帰って来うへんから、いくら何でも心配してたんよ?」 「一回母さん来たやん。向こうに観光に」 「1年以上も前の話やないの」 母親が続けて言った。 実家のダイニングテーブルに両親、兄夫婦とその子供2人、嫁に行った姉夫婦とその子供1人…計10人がズラッと並んで座り、俺の帰国パーティーと言う名の宴会。 「母さん心配してたんやで」 そう言いながら、父親が酒をすすめてくる。 「そやけど、海外勤務なんて格好いいやん」 「何作ってるん?」 「製薬会社なんやから薬やろ?」 「何の薬や?」 兄や姉、義理姉や義理兄が口々に言うから、応えられない。 大学進学のタイミングで上京し、それからずっと1人で暮らしてきた。 実家に帰ればいつもどんちゃん騒ぎだけど、さすがに2年半留守にすると、子供はでかくなってるし、久々の宴会に面食らう。 「ごめんくださーい」 玄関の方から声が聞こえて、義理姉が向かう。 どこかで聞いたことのある声だと思った。 「蛍さん、長谷川さんがいらっしゃいましたよ」 義理姉が玄関から戻って教えてくれる。 華奢な義理姉の後ろから大柄の男が顔を出した。 「おっ!淳也やないか!お前も飲め!」 父親や兄のテンションが上がる。 デカイ男が俺と父親の間に、母親が持ってきた椅子を置いて座った。 父親からお酌を受ける。 「何でいきなり現れんだよ」 「おばちゃんに今日帰国やって聞いてたんや」 淳也はそう言って嬉しそうに冷酒グラスをかかげる。 「もっかい乾杯や!」 兄の声で乾杯した。 淳也は俺の幼なじみ。 それこそ、ガキの頃からの付き合いだ。 良いことも悪いことも一緒に経験してきた。 「やっぱ、おっちゃんや兄ちゃんらが作った“ほまれ”は最高やな!」 淳也が一杯飲んでそう声を上げた。 「そやろそやろ、遠慮せんと飲め。売るほどあるから!」 父親がそう言うとみんなが笑った。
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