No.8 emotion

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翌日、響のお母さんと弟の久志君が病院に駆け付けた。 守りきれなかったことを謝罪した。 響のお母さんは、俺に非はないと言った。 その優しさがまた、痛かった。 退院の支度の為、俺は病室を出て休憩スペースで会社に電話した。 午後には出社することを伝えて電話を切ると、ベンチ椅子に座る。 溜め息が漏れた。 「休んだ方がいいんじゃないですか?」 そう声を掛けられて顔を上げると、久志君が目の前の自販機でパックジュースを買っていた。 「何か飲みます?」 「いや、大丈夫、ありがとう」 彼は対面になる前のベンチに座る。 「ケガ、大丈夫っすか?」 彼にそう問い掛けられて、シャツの袖から包帯が見えているのに気付いた。 実は響が治療中に、病院スタッフに指摘されて、自分もケガをしていることに気付いた。 揉み合った際に、相手に引っ掛かれたのか、だいぶ深く抉れていた為、処置して貰っていた。 俺はシャツの袖のボタンを閉めて、見えないようにした。 「大丈夫、大したことない」 「それも一緒に、伯父さんに慰謝料請求させますよ?」 その言葉に俺は苦笑。 「いや、必要ない。お姉ちゃんにも言わないで。知らない方がいい」 「ケガまでして守りきれなかったら、虚しいっすよね」 彼はそう言いながら、ストローでパックジュースを飲む。 飄々とした感じではあるけれど、彼から若干の苛立ちを感じる。 「お姉さんを守りきれなくて、悪かった…」 彼から感じた俺への責めのようなもの。 謝って済むことじゃない。 響が襲われてしまった現実は消せない。 「知らせて欲しかった……です」 彼の姉を思う気持ちがひしひしと伝わった。 午前中のうちに響は退院。 久志君が運転する車でお母さんと3人で彼女のマンションに帰っていった。 帰りはすっかりいつもの響で、安心したような心配のような気持ちが渦巻いた。
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