思いで

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三時のおやつを食べていると、子供の頃、近所に居たお婆さんを思い出す。 それは私が小学校4年生位の時の話だ。 両親が共働きで帰って来るのが遅く、近所にも同じ年位の友達が居なかった私は、学校から帰ると本当に暇だった。 男の子だったら一人で遊びに行けたかもしれないけど、女の子が一人で歩くのは危ないからって、私は近所のスーパー位しか一人で出かけちゃいけなかった。 でも晴れた日にずっと家に居るのも何か嫌で、私は近所を時々、散歩した。あんまり小学生らしくない過ごし方だったけど、家にあるゲームや漫画はすっかり飽きてしまってたから。 その日も私は散歩してた。いつもだったら右に曲がる十字路を、私はどうしてかこの日、左に曲がってみた。これだけでちょっとした冒険みたいで楽しかった。 暫く近所だけど見慣れない道を行った後、その家に私は着いた。私はそこで自分の家に引き返すつもりだった。その時だった。 「あんた、ちょっとおやつを食べていかないかい?」 最初、声がどこからしたかわからず、私はきょろきょろと周囲を見渡した。 「こっちだよ、こっち」 やっと私は塀の向こうの縁側から、見知らぬお婆ちゃんが呼んでいるのがわかった。
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