外伝「コロネ・ミスティリア」

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外伝「コロネ・ミスティリア」

  「――あぁ、可哀想なコロネよ……何も出来ない、この無力な父を許しておくれ……」  ベッドに横たわり、重症だと一目で分かる少女の手を握るのはブリオッシュ王国の王バウム・ミスティリアである。  そしてベッドに横たわっているのはブリオッシュ王国の最後の王女……コロネ・ミスティリア五歳である。  これは遡ること一年前……コロネが四歳の時のことだ。  コロネには二人の兄と一人の姉が居た。  もちろん最年少のコロネは王位継承権最下位だ。  そんな難しい事を知る由もなく、走れるようになったコロネは兄や姉達の真似をするようになり、召使いや訪れた者にイタズラを繰り返す、とてもやんちゃな日々を過ごしていた。 「――ッ! コッコロネ様! 私のポケットにカエルを入れないでくださいー!」  コロネを注意しているのは召使いのクレア。  ゆっくりとポケットからカエルを取り出し、コロネに対して怒ったが毎回効果はないのだ。 「クレアが鈍臭いのが行けないんだよーだ!」  このようにやんちゃな道まっしぐらな日々をコロネは過ごしていた。  とある男が王に会いに来た時に事件は起きた。  男はこう言った―― 「この像を玉座の間に置いて頂いたあかつきには、この国は莫大な富と豊かな大地が約束されるでしょう!」  その小さな像はお世辞にも神々しさが無く、むしろ禍々しさを纏っていた。  だが、まぁ試してみるのも良いだろうとバウム王は軽い気持ちで購入したのだ。  そして購入してから数ヶ月が経った頃の事だ。  イタズラ好きのコロネはその像をたまたま割ってしまうのだ。  コロネは大慌てで逃げた。  バレないようにカーテンの中に隠れて息を潜むように。 「やっちゃった!? たしか兄上と姉上達はお母様の部屋に居るはず! ここに隠れればバレない……!」  コロネがまだ小柄のおかげか誰にも気づかれません。  暫く隠れていると割れた像が揺れ始め、像の目が赤く光ると割れた場所から禍々しい霧が溢れ出し、ブリオッシュ城全体を包み込んだのだ。 「な、なんだこれは! 早急に調べよ! 外部と連絡はつくか!?」  バウム王は今までにないほど慌てた。  そして目が赤く光る像を見た時に悟ったのだ。 「――もしや! あの像の仕業か!? ぐぬぬ、こうしてはいられん! 皆は、皆は無事か!?」 「王よ! 外部と連絡が出来ません! ですが、王宮魔術師によると少しずつ霧が薄くなっているのがたった今判明致しました! もうしばしの辛抱でございます……!」  バウム王はその言葉を聞き、ため息をしながらそっと胸を撫で下ろす。 「ふぅ、驚かせおって、皆が無事なら良い。  クレア、水を一杯くれないか? 喉が乾いてのう……」  落ち着くには水を一杯グイっと行くのが一番だ。  近くにいたクレアにそう頼むとクレアはフラフラとしながら水を運んで来た。 「お待たせ致し、しま、しました。こ、こここ、こちらに……ゴフッ」 「ど、どうしたのだクレア!?」  クレアは目や口から血が溢れ出し、いきなり倒れた。  バウム王は何とか頭から落ちないようにクレアを支えるが虫の息。  そして悪夢のよう光景の始まりだったのだ。 「コヒュ、お、おう……さま……ガハッ! お逃げ、ください……」  クレアは恐怖と不安で顔色を悪くしながらも力尽きる前に何とか王が逃げるように力を振り絞って言ったのだ。  そしてクレアの頭を支えていた手に違和感があるのに気づいた。 「――なっ!? ク、クレア、髪が……!」  手にはクレアの髪の毛がびっしりと付いていた。  まるで根元から抜け落ちるようにクレアの髪が抜けていったのだ。 「くっ! 他のものは無事か! これはどのような症状だ! 呪いか!? 分かる者はいるか!?」  バウム王は叫び続けた。  自分は王になる為の努力はしてきたが高度な治癒魔術が使える訳でもなく、達人的に剣術が上手い訳でもない。  王はただただ叫ぶことしか出来ないのだ。 「ち、父上……!」  王妃のいる寝室から現れたのは長男で王位継承権一位のクーン王子だ。 「クーンか! 何があったのだ! 皆無事か!?」  クーン王子はバウム王の近くまで行くとクレアと同じ様に血を吐きながら倒れた。 「ちち……うえ……もう……母上も……みんなも……」  クーンはそう言い残すとバウム王の胸の中で涙を流しながら息絶えたのだ。 「うっ、クーンよ、あぁ……み、みんな……? 今みんなもと、言ったのか!?」  バウム王は寝室まで急いで走った。  老いた体など忘れてしまったかのように全力で走り、寝室まで着いた瞬間、目の前の光景に絶望した。
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