「新たな命」

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「新たな命」

   ――そして十ヶ月後  俺は毎日のように素振りをしていると突然エリナの陣痛が始まった。  つまり、エリナの出産日が来たのだ。  俺が産まれる時はセインが走って産婆と治癒魔術師を連れてきたらしい。  今回も産婆を呼び、俺とセインが治癒魔術を行うという万全な状態で出産を迎えることが出来た。  そして分娩が始まった。  産婆は手馴れた様子で落ち着いて対処していた。 「えっと! ち、治癒魔術はいりますか!? 僕はどっどうすれば……!」 「アラン、落ち着け……!」  俺が慌てているとエリナが苦しみ出す。 「うっ……」 「大丈夫か! エリナ! エリナ! エリナァァァァ!」 「う、あなた、ちょっ、ちょっとうるさい!」  この中で一番落ち着いていなかったのはセインだった。  さっきから何回もエリナに大声で呼びかけており、出産中、力んでるエリナにうるさいと怒られるまでずっと慌てているのだ。二人目なのに。  エリナの出産はスムーズに行われた。  逆子という可能性もあるらしいがそんな心配入らなかったらしい。  エリナが何度か苦しそうにしていたせいか、俺も微力ながら必死にヒールライトを当てて援護をした。  そして産婆は手馴れた様子でゆっくりと赤子を取り上げた。  赤子は無事にこの世界に誕生することが出来た。  まるで存在を主張する様に今も元気に産声を上げて部屋に響き渡らせている。 「おぎゃあぁぁ――!」 「エリナ様おめでとうございます。 かわいい女の子です」  性別は女の子らしい。  新しく俺に妹が出来た。  妹と聞き、複雑な気分だったが今度は良いお兄ちゃんになろうと心に決めた。  産婆が赤子を産湯で入浴させた後、セインへと赤子をゆっくりと渡した。  セインは産まれたばかりの赤子を抱きながら、とろけた顔の様に笑っている。  この顔は確か……俺が生まれて指を掴んだ時に見た顔だ。  懐かしいな。 「エリナ、ありがとう……」 「ふふ、良くやった! でいいのよ?」 「それは偉そうじゃないか?」 「それもそうね……うふふ」 「アラン! ほら、妹だぞ? ゆっくり渡すからなっ!」 「は、はい!」  セインから妹を受け取り、不器用ながらも抱き上げる。  重さ的には軽いだろう。  だが、聞こえてくる心音を聞くと何故か重く感じるのだ。  きっと、これが……命の重さだと思う。  そして名前はアリスと名づけられた。  アリス・ビスキットだ。 「お父様! 僕、良いお兄ちゃんに慣れるよう頑張りますっ!」 「おう! 俺もかっこいいパパを目指す!」  無事、エリナの出産は終わることが出来た。
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