「隣国の王女様」

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産まれてから六年間、いや、前の人生でさえ今まで恋などした事がない。  初めての感情である。 「み、見ないで……」  必死に猫耳を押さえながら、ロゼッタは瞳に涙をためながら小さな声で言った。  獣人族はそこまで珍しくはないと思うが……。  そう思っている時、ふと勇者の物語を思い出した。  その時だ。騎士団の一人が取り乱す。 「――ひっ! 黒髪ネコ種の獣人!?」  特徴が同じなのはわかるが……何故そこまで驚いているか考えているとカイルさんがこっそりと教えてくれた。  やはり黒髪の獣人が裏切った話が原因らしい。  この世界ではネコ種の獣人族から稀に生まれる黒髪の子は厄介者扱いされている。  普通の黒髪は大丈夫だが、ネコ種獣人と黒髪が合わさるのがダメらしい。 「ん~僕は可愛いと思うんだけどなぁ」  ふと、考えていたらつい本音が出てしまった。  俺の声を聞いた瞬間、ロゼッタの顔がみるみるうちに赤くなっていた。 「髪の色と種族が同じだからってそこまで驚くことねぇぞ! 本人が隠したそうにしてるんだからいいんじゃねぇか? ほら、訓練に戻るぞ!」  セインがロゼッタちゃんを庇うように、珍しく真面目そうなことを言っている。  いや、何故俺を見てドヤ顔をしているんだ……。  もしかして俺の前だから良い格好をしたいのだろうか? 「あ、アラン様は平気なの……?」  まだ涙目の状態でロゼッタちゃんが話しかけてきた。  胸の高まりが止まらない。 「ぼ、ぼぼぼ僕は全然大丈夫でしゅ!」  声が裏返りそうになったが持ちこたえた。 「そっか、そう言ってくれる人初めてだったからビックリしちゃった、えへへ……嬉しい」  理解者が現れたおかげで安心した様な顔で笑っていた。  か、可愛すぎる!?  しばらくチラチラとロゼッタちゃんを見ながらお互いの事について話していた。  周りから見たら挙動不審に見えるかもしれない。 「ロゼッタちゃんはお城でどんなことしてるんですか?」 「あまり、部屋からは出ないです……部屋で本を読んでいることが多いかな……」 「い、いいですね! 僕も本は大好きです!!」  気づけば二回目の休憩時間になったらしい。  セインが汗をかいてこちらに戻ってきた。 「姫さんごめんな!  男ってのは勇者の話が好きなやつが多いからあんな反応しちまったけど気にしないでくれ!」  セインが申し訳なさそうにロゼッタに謝罪している。 「わ、私はもう大丈夫です……!」  二人が話している時、カイルさんに視線を送ると、セインをじろじろ見ているのに気づいた。
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