「勇者の絵本」
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「勇者の絵本」

   エリナは俺の周りをうろちょろとしながら、何をしようか悩んでいるようだ。  玩具を取り出しては俺の前に出し、ゆりかごを揺らしたりなどと試行錯誤をしている。  そして何かを思いついたように本棚の方に歩いていった。 「ふふふ、まだ早いと思うけどお母さんが絵本読んであげる! アランは男の子なんだもの! 勇者に憧れると思うから大好きな絵本になると思うわ」  エリナは少し厚めの本を本棚から取り出し、俺の近くまで持ってきた。  文字は読めないが、話ぶりからすると勇者の伝説やら、勇者の物語と言う内容に違いない。  エリナは俺に読み聞かせるようにゆっくりと読んでくれた。  ~勇者タカシの物語~  むかしむかし、大きな国の玉座の間に召喚されて、ある男がいきなり現れました。  彼はタカシ・アマネと名乗りました。  彼は、この世界の知り合いや家族はいません。  神様の願いを受けて、異世界から魔王を倒すべくして勇者として召喚されたのです。  まずタカシは仲間を探しました。  でも勇者の事を知らない人達は、どんなに声をかけても目もくれません。  タカシは思いました。  まずは有名になってから仲間をみつけよう。  それからタカシはギルドに登録し、沢山の人の願いや頼み事を引き受けました。  全てやり遂げた時には既に街で知らない人は居ないほど有名になっていました。  そしてタカシの元に四人の仲間が集まりました。  一人目は黒い髪をしたネコ種の獣人の女性。  テフ・インジェラです。  彼女は言いました。  アタシが一緒なら旅の道中で役に立ちましょう……と。  二人目は国で一番の剣の使い手の男性。  ロイド・フーガスです。  彼は言いました。  俺が一緒なら、どんな敵も斬り伏せよう……と。  三人目は里から出てきた格闘家の女性。  サリー・ランです。  彼女は言いました。  私が一緒なら、どんなものも砕いて見せよう……と。  四人目は国で魔術の研究をしている男性  アインバック・ラウラです。  彼は言いました。  僕が一緒なら、どんな傷も癒し、魔術の力で敵を葬ってやろう……と。  タカシに仲間が増えたことにより、一人で行動していた時よりも沢山の活躍をしました。  人を救い、古城の悪霊を倒し、魔人の手から村を救うなど、数え切れないほどの活躍です。  タカシは魔物による被害を次々と食い止めていきました。  そんな時です。  魔王は考えました。  勇者の仲間を操って悪者にしよう。  そして魔物を集め、一気に倒してやろう……と。  術に掛かり、操られたのは仲間の黒い髪の獣人です。  彼女は言いました。  勇者がいるからこの国に魔王が攻めてくるのだ……と。  最初は国のみんなも、そんな馬鹿なと鼻で笑いました。  ですが、言葉通りに魔物の被害は以前よりもどんどんと、増えていきます。  やがて一人の起こした小さな波は、思いもよらずにどんどんと大きくなって行きました。  ある日の事です、なんと魔王が魔物を率いて国に攻めてきました。  タカシは国中の人にこう言いました。  『みんなで戦おう! 大好きな国をみんなで守ろう!』  だが、みんなの返事は予想外の言葉です。  仲間の獣人女性がもう一度言いました。  勇者がいるから攻めてくるんだ! 国から出ていけ!   それを聞いた街の人々も、同じように勇者に当たってしまったのです。  タカシは悲しみました。  必死に守ってきた人達に裏切られた。  今までやって来たことは意味が無いのか……と。  ですがタカシは諦めませんでした。  タカシと三人の仲間で魔王が率いる魔物軍団三百体と戦ったのです。