外伝「クリムゾン」

1/6
2313人が本棚に入れています
本棚に追加
/213

外伝「クリムゾン」

   フローレンス王国から南西に少し行くとアルブという名の村がある。  そこから女性二人が大きな荷物を持って旅立とうとしている。  そんな二人を見送ろうと村の全員が入口の門まで集まっているようだ。  女性の名前はネマ・ルヴァン。  そしてエリナ・アマネだ。  人族は十八歳で成人になり、十四歳になると大体の子は魔術学校、または騎士学校に通うのだ。  二人が旅立つ理由はフローレンス王国の騎士学校へと入学する為だ。  手には村人達が貯めた入学金が握り締められている。  そして惜しみながらアルブ村の人達に別れを告げる。  少し歩いた後もう一度村を振り返ると二人は様々な思い出が蘇る。決意して踵を返すと二人はフローレンス王国を目指して歩いたのだ。  アルブ村からフローレンス王国までは馬車で一時間程だ。  なるべく節約したい二人の旅はもちろん歩きである。  やっと辿り着いたフローレンス王国は村で暮らしていた二人にとって未知の世界だった。  アリのように集まる人、沢山のあらゆる物が売っている露店など様々だ。  簡単な地図しか持ってない二人は通りかかる人に道を聞き、騎士学校を目指す。  途中で変な連中に声を掛けられる事もあったが二人にとってはどうでもいい事だ。  騎士学校はとても広く、中央に運動場のような場所が設けてあった。  そしてアリの進行の様に綺麗に並ぶ列を見た二人は人数の多さにまた驚いた。  フローレンス王国に来てから、もう何度驚いたか二人は既に数えていない。  そして入学式当日には恒例の実力審査がある。  一対一での勝ち抜き戦だ。  この試合の結果次第で合格、不合格が分かり、クラス分けもこれで決めるらしい。  グループ事に団体戦で線引きした後はくじ引きで対戦相手が決められ、時間になったら試合が始まるのだ。  ネマの初戦の相手はフローレンス王国でも少し有名な貴族の一人息子だ。 「ふふん♪僕はね、女性を傷付けることなんて出来ないのさっ! ましてや勝てるとわかっている戦いだ。  今からでも降伏してくれれば君の綺麗な肌に傷は負わせないよっ?」  金髪の髪をなびかせながら意味の無いポーズや回転をしながら世迷言を言っている。  彼はとても自信があるらしい。  そして次に口を開いたのはネマだ。  ネマは剣を構えた後、すぐに斬ってやろうかと思っていたが少し様子を見る。 「私は別に構わないぞ? せっかく村の皆がお金を出してくれて入学出来るんだ。  ちゃんと結果を示さなきゃ行けないだろう」  ネマ・ルヴァンという女性はとても真面目な人間だ。  毎日素振りの特訓を欠かさず、元騎士の父から教わった事を破ったことなど一度もない。  そして父から『大切な人を必ず守りなさい』 と言われて育ってきた。  その為には何がなんでも騎士にならねばならないのだ。 「ふふん、話がわかってないみたいだね。  なんならこのっ僕のっ! ガールフレンドにしてあげるよ?  だから君には合わない剣なんて捨ててさぁ!」  剣なんて、その言葉にネマは苛立ちを覚え、キッと貴族の息子を睨む。  はじまりの合図は既に鳴っているにも関わらず戦闘が始まっていない事や一方的に無駄話をされてる事にも嫌気がさしてきた。 「僕の家はね、フローレンス王国でも有名な……」  ――シュッ!  貴族の一人息子が夢中に喋っていると剣を振ったような音が聞こえた。  そして一人息子は前髪が切れていることに気づく。 「なっ!? ぼ、僕の前髪がっ!」  一人息子は慌てている。 「無駄話が過ぎるぞ。  お前のような弱くてつまらん男の女に誰がなるか!」  ネマが言い放った言葉は観戦していた皆が聞いていた。
/213

最初のコメントを投稿しよう!