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『赤い猿』
埼玉市に住む、マサキはペットとしてジミーと名付けた猿を飼っていた。
彼は、そのジミーと、食事は無論のこと良く散歩に出たりもしていた。
ある時、公園を散歩していた時、不意に飛んできた蜂がジミーの顔に止まった。
あわてたマサキは手で追い払ったが、ジミーの顔に黒っぽいアザが残ってしまった。
赤い顔に出来た黒いアザは、他人の目には分かりずらかったが、知ってるマサキとしては、どうも気になった。
色々と考えた末、マサキはホームセンターで人体にも無害という赤い染料を求め、それでジミーの顔一面に塗ることにした。
ところがジミーにしてみれば、ご主人の行為とはいえ、いきなり顔に色を塗られたものだから、暴れた。
そのためジミーの髪や胸などにも、赤い染料が付いてしまった。
マサキは溜め息をつくと、
「ジミー、暴れたおまえが悪いんだぞ……」
ジミーの全身に赤い染料を塗って、赤いサルにしてしまったのだった。
「いいじゃないか! 世界に一匹の赤い猿だー」
それ以来ジミーは、鏡に映った自分を見るたびにガッカリするようになった。
散歩に出るのも嫌がったが、マサキは特に気に止めなかった。
それから数日経った、ある夜……
寝室で寝ようとするマサキをジミーが誘った。
暗がりで見る赤いサル、ジミーはどことなく不気味だった。
マサキは怪訝そうに、
「なんだジミー。何処へ来いというんだ?」
仕方なく、パジャマ姿のマサキが、ジミーに付いて行くと、行き先は地下の作業部屋だった。
「なんだ? 何かあるのか?」
と、マサキがボロで木製の階段を降りて行くと、途中で足を掴まれて落下し、気絶してしまった。
マサキを落下させたのは、ジミーが相談した仲間の猿のトムだった。
ジミーとトムは、気絶してグッタリしているマサキのパジャマを脱がせた。
そしてマサキを全裸にすると、トムに手伝ってもらい、マサキの全身に赤い染料を塗っていった。
トムは、真っ赤に染まっていくマサキを見ながら、興奮しているようだった。
そして、ふと真っ赤なジミーの方を見た時、トムは突然、両腕を上げると
ワオ――!
という雄叫びを発し、暴れだした。
それから半時間後、通気口からトムは出てきて、表通りへと走り去ったが、その手や顔は真っ赤だった。
それから1ヶ月後……
マサキが社長を務める『Mプランニング』の社員2人が、行方不明という事で、彼の自宅を訪れた際、ドス黒い大きな染みが広がった地下室で、全身を真っ赤に塗られた上、バラバラにされて亡くなっているマサキとジミーを発見し、愕然となった。
さっそく若い社員は警察に届けようとした。
が、初老社員は現場の状況から、若い社員のスマホを制止し、
「これが判明すると、社のイメージに少なからず影響するぞ」
「それじゃ……?」
「彼は、全く身寄りの無い天涯孤独の身だったんだ。だから今のまま行方不明でいいさ。犯人は全く分からないが、そうとう頭の良いヤツだろう……。それに、この遺体も、ちょうどバラバラだから、何処かに処分しよう。そして、ここは地下室だから埋めてしまえばいい」
「なるほど……」
2人の社員は、さっそく作業にかかった。
――終――
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