デート

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約束の土曜日の朝 慣れない短大生活をなんとか1週間乗り切り、少し疲れもあるけれど。 今日のデートは昨日の夜からドキドキしていて、あまり眠れなかったのも事実で、、、。 窓を開けるとあいにくの曇り空。 「なんか雨降りそうな天気」 でも、デートだ!! 急いで身支度を整える。 可愛いワンピースを選び、少し伸びた髪の毛をまとめた。 お化粧は控えめに。 あんまり急いで大人になると、焦ると言った先生。 急いで大人になりたいけれど、このままの今の私を好きでいてくれる先生の気持ちが温かい。 待ち合わせの時間が近づく。 「どこいくの?」 出かけにお母さんが聞く。 「ちいちゃんと買い物」 「雨降りそうだから傘持っていきなさいよ」 「はぁい。いってきます。」 ちいちゃんと買い物、、、か。 なんだか嘘をついてるのが少し後ろめたい気持ちもある。 でも、まさか元とはいえ、先生と付き合ってるなんて親には言えない。 いつかは話す時も来るのかな。 そんな事を考えながら空を見ると、曇り空はどんどん暗くなっていく。 雨、降りそう。 家の角を曲がると、白い車がある。 走って、助手席に乗り込んだ。 「ごめんね、待った??」 「いや、今着いたとこ」 私がシートベルトをつけると先生はアクセルを踏んだ。 「じゃあ、行くか。」 先生の顔を見ると、会えた嬉しさがこみ上げる。 デートだ!嬉しい! でも、雨はポツリポツリと降り出し、車のワイパーが動く。 「あいにくの天気だな。」 先生がハンドルを握りながら呟く。 「うん。晴れればよかったね。」 「天気良かったら湖らへんまで走らせるかなと思ってたけどなぁ。この天気じゃあな。」 とりあえず市街地を抜けたはいいけれど、行き先は決まっていない。 「どーすっかな。とりあえず近場は過ぎたけど。どっか行きたいところあるか?」 行きたいところ、、、か。 急に聞かれても出てこない。 「うーん、、、。」 少し考えて、一つ行きたいところが頭に浮かんだ。 でも、少し言うのをためらってしまう。 臆病になりつつも、ハンドルを握る先生に言ってみる。 「一つあるんだけど。」 「なに?どこ?」 思い切って言ってみる。 「水族館。」 私がそう言うと、少し驚いた表情で私を見る先生。 「水族館?」 「うん。前に2人で初めて行った場所なんだけど、、、。」 先生は覚えているかな? 「あー。昔行ったな、そういえば。」 あ、覚えててくれたみたい。 そう、昔付き合いたての時に初めて行った場所。 あの時は私は高校2年生だった。 先生に好きって言ってもらえて、初めて2人でデートした場所が水族館だったんだ。 急に思い出して、行きたくなったんだけれど。 あの時は手もつなげなかった。 初めてのデートで、嬉しくて、すごくドキドキしたのを覚えている。 その後美咲さんが出てきて、一方的な勘違いをして、私は別れを口に出した。 そして、先生と別れた。 苦い思い出の場所でもあるんだけど。 「また行きたいなと思って。ダメ、かな?」 先生はあまり覚えてないかもしれない。 あの後別れて、私たちはあやふやな状態になったんだ。 そんな初デートの場所なんて記憶にないかもしれない。 恐る恐る先生の顔を見てみる。 先生は優しくふっと笑って、私の頭をポンポンと、軽く叩いた。 「了解。屋内だからちょうどいいかもな。」 そう言って車は水族館のある街へ向かったんだ。 嬉しい。 初めてデートをした場所にまた行けるなんて。 あの時の私は今よりも子供だったなぁ。 何も考えず、好きっていう気持ちだけで動いていた。 まぁ、今もそんなに変わらないけど。 でも、今なら、前とは少し違った気持ちで楽しめる気がしたんだ。 あの頃より、ずっと先生が近くにいるから。
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