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鳴り止まない電話
「なにかいいことあったの?」
発注書を流そうとFAXの前に立っていたわたしは、突然投げかけられた問いに顔を上げた。
職場の先輩の葵さんが、手に書類を持って隣に立っている。
「どうしてですか?」
いいことなんて、あるわけがない。
「トウコちゃん、今、鼻唄歌ってたから。いいことあったのかなって思ったんだけど」
鼻唄?
無意識だった。
「あ、すみません」
「責めてるわけじゃないから、気にしないで。変なこと訊いてごめんね」
「そんな、謝らないでください」
仕事中に鼻唄ってる方が、明らかに悪い。
それにしても、自分で全く気づいてなかったってのはやばい気がする。
気をつけないと、とわたしはデスクに戻りながら思った。
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