第一章

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『シビレ罠』の効果がどれだけ続くか分からない。いつ罠の効果が切れるのか、モンスターに反撃されるのか。この先の展開に怯えながら、それでもユーリたちは攻撃の手を緩めない。 ようやく訪れた好機。その全ての時間を攻撃に注ぎ込む。 「本当に最悪な気分だよ。こんな最悪な日に、お前のせいであの日を思い出してしまった!! でも改めて思った……私は『アイツ』を倒す為にハンターになったんだって。だからここで死ぬつもりも負けるつもりも無い。だから私たちと彼女(・・)の手で一矢報いる―――!!」 勝てるとは思わない。それでも、せめて痛手くらいは負わせたい。 「おじゃま王ときゃみーはそろそろ下がれ!! 俺とユーリはまだ攻撃を」 「だめヴァルト、罠がもう限界!!」 きゃみーの声と共に『シビレ罠』の効果が切れる。 罠から解放されたモンスターは剣のような尻尾を頭まで持っていき噛みついた。ゴゴゴゴ、とまるで大岩を研ぐような音と共に尻尾は熱を帯び、鋭さを増す。 その隙に四人は一旦離れようとするが、なにやらモンスターは力を溜めているように見え、その様子にユーリの直感が警鐘を鳴らす。 (あ―――これは、死ぬ) 今の四人ではどうしようもない、防御も反撃も不可能な、死の一撃。それが放たれようとしていた。 (間に合わな―――) 「ガアアアアッ!!」 「リオレイア!?」 残る片足も折れ、満身創痍のリオレイアが、モンスターの尻尾へ向けてブレスを放った。そのブレスが命中した瞬間、 ドゴォオオオオン!! 鼓膜が破けるかと思うほどの大爆発が起こる。あのブレスは恐らく『高出力火炎ブレス』だろう。通常のブレスよりも明らかに爆発の規模が大きい。 「ギャオォン!?」 最早モンスターの頭ではリオレイアが動けなくなった時点で敵として認識していなかったのだろう。 しかし、リオレイアには動けなくとも攻撃できる手段があり、ユーリたちの『シビレ罠』と攻撃で時間を稼いでいた事で放てるだけの体力を回復出来たのだ。 「怯んだ……、あとは―――」 そしてユーリの目はその僅かな隙を逃さない。 (力を溜めて、前傾姿勢に、武器は体の後へ……) 子を守る為のリオレイアの攻撃、ユーリたちの攻撃、そしてこのブレス。恐らくはリオレイアの攻撃のみでは足りなかった。ユーリたちの攻撃では不可能だった。 これはハンターとモンスター、二つの攻撃があったからこそ可能に出来た事だ。どちらかが欠けていたら、この攻撃の後にユーリは死んでいたのだから。 「狩技―――」 後に、彼女らは多くのハンターから注目される事になる。まだ駆け出しのハンターが、彼のモンスターから逃げ仰せ、モンスターにとって最大の武器をへし折った、と。 「『地衝斬』改め、父さん命名……」 ―――至れ、ユーリ。絶衝の果てへ。その一撃を以てあらゆる障害を吹き飛ばせ――― 「吹き飛べ―――『絶衝撃』!!」
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