第二章

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「いやー、君たちが無事に生きて帰ってきて本当に良かったよ」 そう言って安堵の表情を見せたのは『龍歴院』の主席研究員。若い竜人族の男性で、モンスターの知識なら他の研究員の追随を許さないほどらしく、その知識を『モンスターリスト』としてハンターに無料で配布している。 「報告で聞いたよ。まさか、あの『斬竜』―――ディノバルドが現れるなんてね……」 『龍識船』の不時着事故及びそしてモンスターによる襲撃は駆けつけた救助隊により解決した。 乗船していた乗組員の多くは負傷はしたものの全員の無事が確認されたが、リオレイアやマッカォの襲撃によりハンターの何人かは死亡。不時着した『龍識船』の撤収作業も終わり、ようやく一息ついた、という感じである。 そして、救助隊が到着するまでの時間稼ぎとして先に駆けつけた駆け出しハンター四人だが、 「君たちの報告書を読んだよ。『龍識船』を襲ったリオレイアはディノバルドにより倒され、リオレイアの足止めをする為に『古代林』の奥へと進んだ君たちとディノバルドが遭遇し逃げる間もなく戦う事になり、辛うじて撃退した。しかしその結果……彼女の武器と防具は破損し重症を負った」 主席研究員は心配そうな目でベッドの上で静かに眠るユーリを見た。 ユーリがいるのは彼女の家だ。そこにはヴァルト、おじゃま王、きゃみー、主席研究員の四人がいる。そしてベッドの隣には真っ二つに折れた武器と胴部分が完全にダメになった防具が置かれていた。 鉄鉱石など入手しやすい鉱石から作れる大剣『アイアンソード』。そして『怪鳥』イャンクックの素材から作れる『クックシリーズ』。これが救助に向かった時にユーリが身につけていた装備だ。 「彼女の実力と、君たちがいたならリオレイアの足止めは可能だったかもしれない。けどディノバルドは流石に死んだかと思ったよ」 「『斬竜』……ディノバルド……」 「熟練のハンターも手子摺るモンスターだ。最近はヤツがいるなんて、そんな報告は聞かなかったんだけど」 そんな相手をよく撃退できたね、と主席研究員は言う。―――彼は信じないだろう。撃退は四人の力のみで成したのではないという事を。 あの『共闘』は、四人にとって特別な体験であり、秘密でもあった。どうせ言っても信じないのだから言う必要はない、と。 「医者によればユーリちゃんの肋骨が三本骨折、右腕の骨にヒビ、背中全体に大きな痣、暫くはお休みだね。今回は身体的にも精神的にもかなり負担をかけたみたいだし」 「あの時、ユーリに何があったのかな……いきなり叫んで、あんなのいつものユーリじゃなかった。研究員さんは何か知ってるの?」 きゃみーが主席研究員に問いかける。だが彼は、 「……まあ、良くある話だよ。時間が空いた時にはまたユーリちゃんの様子を見に来るよ、じゃあね」 それだけ言って、ユーリの家から出て行ってしまった。 「明らかに何か知ってる様子だな」 「だな(フゴ)」 「他の人に聞いても似た感じではぐらかされるし、いったい何があったのさぁ…」 「「「はぁ(フゴ)……」」」 揃って溜め息をつく三人。その様子を見ていたユーリと生活しているアイルーたちは何も言わず、三人分の水を用意するのだった。
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