第一章

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『おう、帰ったぞ!!』 『お帰りなさい、遅かったわね』 ああ、またこの夢だ――― 『ユーリは?』 『もう寝てるわ』 『すまんな、もっと早く帰ってくれば……』 『謝るのは私じゃなくて、あの子にね。ギリギリまであなたの事を待ってたんだから』 思えば、この日から私は拗ねて父とはあまり会話をしなくなった――― 『もう、こんな所に……!!』 『あなた!! 早く逃げましょう!!』 『いや、お前はユーリを連れて……逃げろ』 『!? まさか、あなた……』 また来る、また見る、この最悪の日――― 『グ……ごほっ、ガッ、ハハハ……』 『あぁ……そんな、あなた……』 『すま、ん……な』 もう見たくない、もうやめて――― 『イヤァアア―――――!!』 『ユーリ、お前なら――――』 お前なら、なに? 分からない、口は動いているのに聞こえない、いつもそうだ、いつもここで途切れる――― 「………………ほんと、最悪な気分」 目が覚める。天気は快晴なのに気分は曇天だ。 こんな日に外出しても良い事はない、家の中でダラダラして、ひたすらモフモフしていれば明日は大丈夫――― 「そんな時にはこの特製『元気ドリンコ』を飲むといいよ!! 一口飲むだけであら不思議、脳汁も下の方もドバドバ溢れてたちまち元気になるヨ!! さあこれを飲むんだユーリ、そしていざ行かん我らの性なる楽園へ!!」 「ギルバート、ネコ式火竜車」 「ニャ!!」 チュドーン!! 「逝ぐ(イグ)ゥーーーーー!!」 邪な悪魔が大空へ吹っ飛んでキラリ。 「よくやったね、マタタビあげる」 「フニャ」 さて、と起き上がる。ヤツが来たという事は他の二人も来るだろう。そうなると自然と騒がしくなるだろうから寝ていられない。 諦めて起きるしかないかと嘆息する。
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