第二章

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今回ユーリたちが狩猟したリオレイアは過去の記録を軽く越えるほどの巨体だった。 最近『古代林』に来た個体で、巨体故に大食いである為に餌を探していたのだが、先輩ハンターらがユーリたちの為にと『古代林』のモンスターを狩りまくったせいで、あまり食べられず体力が落ちていた―――というところだろう。そう主席研究員は分析した。 「あなたたち、もうかなり有名よ? ディノバルドと遭遇して撃退、そして金冠(キング)サイズのリオレイアを討伐。まだ一年しか経ってないハンターがやる事ではないの、もしかしたら近い内に指名が入るかもね」 フフッと教官が嬉しそうに笑う。教官の言う『指名』とは例えば依頼者が、是非ユーリにこのクエストをやって欲しい、とギルドにお願いして発行されるクエストの事だ。 指名される、という事はハンターとしては名誉の一つ。依頼者の地位が高ければ高いほど自分はそれと同じくらい有名になったと思ってもいい。 「でもそれデメリットもありますよね」 「モグモグ……ユーリ、デメリットって?」 「先ずきゃみーは口元を拭いて。デメリットは、指名されるって事はそれだけ信用されてるって事になるから失敗した時が大変なの。これまでは報酬金が減ったりするだけだけど、指名クエストで何度も失敗すると、今度は信用されなくなって『この人にだけは任せたくない』とか言われてクエストを受けられなくなるかもしれない」 「まあ、そんな事も過去にはあったわね」 ユーリの言葉を教官が肯定する。 「でも指名クエストは絶対やらなきゃいけないって訳ではないから安心して。クエスト内容で判断したり、依頼者から話を聞いてからクエストを受けるか決めてもいいわ」 「モシャモシャ……ゴクン、なら良かったー」 「だから口元を拭いて、あぁもう……少しはおじゃま王を見習ってよ」 仕方ないとユーリがきゃみーの口元をハンカチで拭く。対しておじゃま王は獣みたいに食い散らかすかと思いきや、 「フゴ?」 「おじゃま王がナイフやフォークを使って行儀よく食べてるだとぉ!?」 驚愕するきゃみーの前でおじゃま王はいつも装備してる『ブルファンゴフェイク』から口元だけを出して料理を食べていた。 「誰がおじゃま王に常識やマナーを教えたと思ってる」 そしてヴァルトが自慢気に胸を張った。 「…………」 楽しげに飲み食いしながら談笑する四人を見て教官は再度笑みを浮かべながら酒を飲む。しかし内心では、 (あの頃に比べたら確かにいいパーティになってきた。でもまだ、あの子だけは違う。表面上ではパーティの要としてやってるし素直になってはきたけど、まだあの子は()()()()()()()()()()()()()()としか考えてない。私の教え方が悪かったのかしら。いつかこの認識の差で軋轢が生じないといいけれど……) そう思いながら教官は酒のお代わりを求めて席を立つ。 (でも今は、狩りの成功を祝ってあげましょう。これからは大忙しになるんだから、ね) ポケットから取り出したのは『ギルド』から渡された手紙。それにはこう書かれていた。 『―――既にユーリ、ヴァルト、きゃみー、おじゃま王に対して指名したいという依頼者がいる。しかし指名クエストの難易度の高さからまだ四人には早いとギルド側は判断した。よって貴殿は早急に彼らを上位ハンターとなるまで鍛えてもらいたい』 (早急に、ねぇ。早くても最低二年は必要だと思うけれど、ユーリちゃんたちならもっと早くなれるとか思ってるのかしら) まあ『ギルド』からのお願いだし、教官自身も善処はするつもりだ。 教え子に指名クエストが来るのは自分の事のように嬉しいもの。周りの期待に応えれるハンターになれるように鍛えてやろう。そう教官は改めて決意するのだった。
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