私の赤ちゃん

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朝、武は寝室から出てくると私と娘に構いもせず家を出ようとしていた。昨晩は帰って来ないのかと思っていたが、いつのまにか寝室で寝ていたらしい。私は娘が生まれてからリビングで寝食をするようになり、寝室にいる武の存在に気がつかなかった。 私はあの女と目が合ったことの恐怖で一睡もできず、娘を抱えたまま壁にもたれ座っていた。もうすぐ朝の7時。そろそろミルクの準備をしなきゃならない。 「ねえ、武」 武がこちらを見る。 「来週の木曜日、この子の一ヶ月健診なの。でも武は仕事でしょう?私1人で行くから」 武は何も返さなかった。その態度が頭に来た。 「ねえ武、あなたストーカーされてないよね?」 「は?」 2秒ほど目が合い、しばしの沈黙のあと「今日は遅くなるから」と言って武は家を出た。今日は、ではなく、今日も、だ。
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